国民健康保険の税額はどうやって算出される?

July 18, 2008 – 6:04 pm

この4月から国民健康保険に加入し、最近、国民健康保険税の請求書がやってきた。この国民健康保険税、住んでいる地方自治体で算出方法、税額がかなり違うようだ。所得税とか地方税など一般的な税金と比べて、みおとりしないだけの高額になるようだ。ということで、我々退職者が支払うことになる国民健康保険の税額がどのように算出されるのか調べてみた。

任意継続が終了すると誰もが国民健康保険に加入: 長年勤務した会社を退職すると、国民健康保険への加入を考えなければならない。この国民健康保険、会社で加入していた健康保険組合に支払っていた保険料と比べかなり高いことから退職後しばらくは任意継続というかたちで、もとの健康保険組合のお世話になる。しかし退職後2年を経過すると、新たな勤め先を得ない限り、国民健康保険に加入しなければならない。

地方自治体ごとに異なる国民健康保険税: Web上で国民健康保険税の解説記事を探すと、必ず気が付くことに、所得が同じでも、居住する地方自治体が異なると国民健康保険税がかなり異なることがある。ある解説記事では、「国民健康保険料は、地域によって年間30万円の違いも!」とある。何故、このような違いがでてくるのか、その算出方法を調べてみた。

国民健康保険税は、地方税法で定められている: いろいろ調べてみると、我々が支払う国民健康保険税は、地方税法第703条の4、第703条の5によるもののようだ。かなり複雑な仕組みになっている。まず、第703条の4の1項には、

第703条の4 国民健康保険を行う市町村は、国民健康保険に要する費用に充てるため、国民健康保険の被保険者である世帯主に対し、国民健康保険税を課することができる。

となっている。この法律の条文、興味深い、「国民健康保険を行う市町村」となっている。国民健康保険を行わない市町村が存在するのか?などと思ってしまう。それはそれとして、国民健康保険税は、世帯主に課税されるとなっている。

必要な医療費総額で国民健康保険税が決まる: その3項では、

3 国民健康保険税の標準基礎課税総額は、当該年度の初日における被保険者に係る国民健康保険法の規定による療養の給付・・・・の支給に要する費用の総額の見込み額から当該療養の給付についての一部負担金の総額の見込み額を控除した額の100分の65に相当する額並びに当該年度分の前期高齢者納付金等の納付に要する費用の額から当該費用に係る国の負担金の見込額を控除した額の合算額とする。

となっている。法律用語で読みにくいが、各年度の「標準基礎課税総額」即ち市町村が健康保険税として課税する総額は、医療費の支給額の総額の見込み額から一部負担金(例の3割負担で我々が病院で支払う医療費)を差し引いた額の100分の65と前期高齢者(85歳未満の老人)の医療費で国が負担する額を差し引いた額を合わせたものになるという。

この記述、一言で言ってしまうと、国民健康保険税というのは、単位とする地方自治体住民全体の医療費のうち個人負担分を除いたものは、地方自治体(100分の65を地方自治体が負担?)と国が一部を負担します。あとは、国民健康保険税として皆さんから徴収ということのようだ。この記述を直に読めば、「(国民健康保険に加入している)住民が健康で病気にならない市町村は国民保険税は安くなります」ということになる。なるほどと思う。

医療費の負担は住民にどのように割り振られる?: 住民のうち国民健康保険加入者全体に課税される総額は理解できた。さて、住民夫々に対する税額はどのように決まるのか?これはかなり複雑だ。市町村ごとにかなり自由度がある。第4項をみると、

4 前項の標準基礎課税総額は、次の表の上欄に掲げる額の合計額のいずれかによる・・・・

となっており、「上欄」には、次の3種類の区分が挙げられている;

・ 所得割総額、資産割総額、被保険者均等割総額及び世帯別平等割総額
・ 所得割総額、被保険者均等割総額及び世帯別平等総額
・ 所得割総額及び被保険者均等割総額

さらに、それぞれの区分について、

・ 所得割総額(100分の40)、資産割総額(100分の10)、被保険者均等割総額(100分の35)、世帯別平等割総額(100分の15)
・ 所得割総額(100分の50)、被保険者均等割総額(100分の35)、世帯別平等割総額(100分の15)
・ 所得割総額(100分の50)、被保険者均等割総額(100分の50)

となっている。市町村ごとに課税のありかたが異なるようだ。この課税システムの違いと住民全体の医療費総額の相違で、国民健康保険税が市町村により異なることの一部は説明されそうだ。

国民健康保険税の加入者は自営業者と退職者: 国民健康保険税の算定手続きは何とか理解できたような気がする。しかし、国民健康保険の加入者は、一般に、自営業者あるいは極めて小規模な事業所で働く人、そして我々のような退職者から構成されているはずだ。

自営業者はともかく、われわれのような退職者の所得は、一部を除いて、平均的な会社員などに比較して低い。さらに、年齢が高くなるにしたがって、当然、病気にかかることが多いのはあたりまえだ。医療費だって高くなるのが自然だ。そうすると、国民健康保険が通常の組合健保に比べて著しく高くなるのは当然の成り行きではないのか?

こう考えると、高額の所得を得ている作家とかフリーランスのデザイナーなどは、相当多額の保険税を支払うことになるに違いない。瞬く間に、上限に達する。こうした高額所得者は、自ら会社を作るとかの手段で、国民健康保険から抜けることになるだろう。そのほうがずっと安くつく。そうすると、国民健康保険加入者の平均所得は低くなり、ますます所得に占める国民保険税の割合は高くなるというのが自然のなりゆきだ。

こうやって国民保険税の算定の仕組みをながめてみると、この制度、かなりの無理があるのではと思えてくる。市町村の違いで保険税が著しく異なるのは国民健康保険加入者の年齢構成の違いなどに直接関係する。最近話題になっている後期高齢者医療制度も、もとをただせば、こうした制度上の無理から生じてきたものだろう。健康保険制度全体を抜本的に見直す必要があるのではと思う。つぎはぎだらけの制度で解決などできはしない。保険制度、ほとんど壊滅状態というのが真実のようだ。

健康保険の一本化というのも考える必要があるのではと思うがいかがだろう。それにしても、我が国の社会保障制度について考えると気が重くなる。


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