まさのあつこ著「あなたの隣の放射能汚染ゴミ」を読んでみた

April 8, 2017 – 10:51 am

近所の公立図書館の新刊書コーナで本書をみかけ読んでみた。

本書は6年前の「福島第一原発事故」により発生した「放射能汚染ゴミ」への行政による対応が杜撰で安全性を無視したものであると主張する。「告発」本のひとつといえる。

福島原発事故直後、この事故に関わる書籍が数多く出版されたが、最近はめっきり関連本を見かけなくなった。そのなかで、事故に起因する環境の放射能汚染問題は、注視しつづけていかなければならない重要な課題と思う。

本書で展開される著者の主張に同意するかどうかは別にして、少なくとも、我々がこの問題について考えるうえで、論点を整理するための手掛かりを与えてくれるものと思う。

本書が主張すること
本書の主張は、本の帯とそでの記述に集約されているように思う。以下のように記述されている。以下、転載:

まさか、わたしの街に!? 道路の下に 放射能ゴミが埋められる!

 福島第一原発の事故で検出された放射性物質の総量は、ヨウ素換算値で約九〇京ベクレル。途方もない量が海や陸へ降り注ぎ、「放射能汚染ゴミ」となった。本書では、これらのゴミが、どこにどのような状態で存在するのかを調査した。そこで明らかになったのは、我々のすぐ身近な場所で、驚くほどずさんに処理・保管されている実態だった。
 一方、この放射能汚染ゴミが今、道路建設などの公共事業で地下に埋められようとしている。そうなれば日本中に放射性廃棄物がばら撒かれ、史上類を見ない公害に発展する可能性がある。なぜこのようなことになったのか、その真相に迫る。

放射線管理の「常識」が通用しない状況下での対処
福島第一原発事故により我が国、特に東日本一帯は「放射能まみれ」の状態になってしまった。事故直後の環境中の放射能・放射線のレベルのなかには、放射性物質をとり扱う事業所の放射線管理区域の制限をもはるかに超えるものもあった。事故以前の放射性物質取り扱いに関わる常識は通用しない状況が生まれたのである。

放射線管理の「常識」を超える状況のなかで、放射線傷害の発生から住民を守るための対応・対処が求められたのである。あるフェーズでは住民の「避難」が、そして異なるフェーズでは環境中の放射線物質を取り除くための「除染」が選択された。放射線管理の原則を考慮しながらも、おおくは手探り状態のなかで、さまざまな対応が施されたのである。

そして、事故から5年以上経った今、事故による放射能汚染物、汚染土壌に対する除染作業などで生じた放射性物質の処理・処分を「適切」におこなわねばならない。この処理・処分においては、従来の放射性物質管理の「常識」を適用できない「てさぐり」の対処・対策が求められた。

放射性物質汚染対処特別措置法
事故発生後、この「てさぐり」の対処・対策の基本とすべき法律「放射性物質汚染対処特別措置法(平成二十三年法律第百十号 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法)」が策定・交付された。放射能汚染ゴミは、この法律に基づき、対処されている。

本書は、一言でいうと、この「放射性物質汚染対処特別措置法」とこれに基づく環境省令に基づく対処が杜撰で安全性を無視したものであると告発する。本書の主張を吟味するためには、この「放射性物質汚染対処特別措置法」を詳細に読み込む必要がありそうだ。

私に、この法律の存在を知らしめてくれただけでも本書を読んだ意味はあったのかもしれない。今後、この「放射性物質汚染対処特別措置法」を精査してみたい。


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