やっと我が国でもインターネット経由でラジオ放送が聴ける?

March 1, 2010 – 3:29 pm

3月15日からインターネットでラジオのライブ放送が聞けるようになるようだ。海外のラジオ局、例えばBBCなどでは、すでに地上波のラジオ番組を、ライブで、インターネット配信している。やっと日本でもインターネット配信が始まるのだ、と期待が高まる。しかし、このニュース、地方在住者にとっては、この恩恵を受けることができるのかどうか微妙のようだ。

「『IPサイマルラジオ』実用化試験配信開始について」と題するニュースリリースが「IPサイマルラジオ協議会」から発表されている(このニュースリリースはここ)。次のようなものだ:

IPサイマルラジオ協議会は、パソコンがそのままラジオ受信機となる「IP(Internet Protocol)サイマルラジオ」の実用化試験配信を開始いたします。今回の試験配信は、独自コンテンツ、エリア制限なしという通常のインターネットラジオサービスとは異なり、在京民放ラジオ7局、在阪民放ラジオ6局の地上はラジオ放送をCMも含め、そのまま同時に放送エリアに準じた地域に配信するサイマルサービスです。近年、都市部を中心に高層建築、モーターなどの雑音源の増加などによりラジオの聴取環境は悪化しています。こうした難聴取を解消していくと同時にパソコンで雑音の無いラジオ番組を聴取できる環境を整えることにより、より多くの方にラジオをお楽しみいただけると期待しております。試験配信は3月15日(予定)に開始し、半年後を目途に実用化を目指しております。・・・

とし、そのサービス内容については、

地上波ラジオ放送を同時に放送エリアに準じた地域にインターネットストリーミング配信するサイマルキャストサービス(無料、ユーザー登録必要なし)

としている。このIPサイマルラジオの事業主体IPサイマルラジオ協議会は、昨年(2009年12月15日)に設立したばかりの新しい組織であり、その会長は宮原秀夫・独立行政法人通信研究機構理事長、その会員として、在京、在阪の民放ラジオ13局、そして事務局として電通が参加している。

「IPサイマルラジオ」実用化試験で何を試験?: このIPサイマルラジオの実用化試験と称しているが、一体、何を「試験」しよとしているのだろう。冒頭で書いたように、海外のラジオ放送局では、既に、地上波と同じ番組をインターネットストリーミング配信している。ストリーミング配信技術は実用化の域に達しているのは常識だ。

では、何を試験しよとするのか?  今回の試験配信が、「独自コンテンツ、エリア制限なしという通常のインターネットラジオとはことなり、在京民放ラジオ7局、在阪民放ラジオ6局の地上波ラジオ放送をCMも含め、そのまま同時に放送エリアに準じた地域に配信するサイマルサービス」という部分がこれを読み解くヒントを提供している。

このサービスでは、「(地上波の)放送エリアに準じた地域に配信」、つまり、インターネット配信の範囲を「放送エリア」に限定しようとしている。こうした地域限定でのインターネット配信というのは、一体、どのようにするのだろうか?地域を限定しようとすると、このサービスを受けようとするユーザーのIPアドレスあるいはDNSからそれを「正確に」特定しなくてはならない。結構、技術的に難しい問題を含んでいると思う。

どうも、「実用化試験」というのは、このサービスを受けることができる地域を限定するための方式を「試験」するというのではないか、と思うのである。ユーザーの聴取している地域を特定するには、IPアドレスもしくはDNSを特定の地域に結びつけるための膨大なデータベースが必要になるのではないかと思う。結構、興味深い話だ。

配信地域を限定するのは何故?: 配信サービスの対象とする地域を限定する必要はどこにあるのだろう。

考えられる理由はただひとつ。インターネットストリーミングによる配信により、地方の民放局の経営が打撃を受けるという危惧があるのでは、と思う。首都圏のラジオ放送がインターネットで聴取できるようになれば、これをキー局とし、同一の内容を配信している地方局の存在意義がなくなってしまう。これを避けるためには、どうしても、インターネット配信でもサービス対象地域を限定する必要があるのでは、と思うのだ。

私の想像することが事実であるとすれば、今や地上波を媒体とする放送局は地上波による配信という旧式の技術にしがみつき、新しい技術を排除しようとする守旧派ともいえる集団ということになる。

それにしても、ラジオ放送の難聴取地域に住むのは、実は、首都圏の住民ではなく地方在住者ではないかと思うのは私だけか?「近年、都市部を中心に高層建築、モーターなどの雑音源の増加などによりラジオの聴取環境は悪化」というが、首都圏の聴取環境に比べて、地方局の聴取環境はもっともっと劣悪だ。

聴取環境の改善をいうなら、まず、地方の聴取環境の改善に取り組むというのが先ではないか。首都圏以上に多くの聴取者が地方に在住している。いまや、インターネット技術という「安価」な配信技術を活用することができる。こうした地方の聴取環境の改善は、今回のインターネット配信により一挙に解決することができる。期待したいものだ。

こうした問題、民放というより、NHKこそ取り組むべきものかもしれない。NHKは、一体、何をしているのだろう?ボーとしていると、事業仕分けの対象になってしまう。