福島第一事故による放射線被曝をどう考えればいいか(その7)

August 5, 2011 – 10:59 pm

 原子力事故による放射線被曝を考えるうえで、事故発生直後の被曝のフェーズと、これに続く慢性的な放射能汚染による放射線被曝を受けるフェーズとを分けて考えることが必要だ。ここでは、後者の慢性的な放射線汚染による被曝について、事故発生直後に、私が、考えたことをメモしておいた。

高止まりする被曝線量: 「その3」でも言及したことでもあるが、事故の発生以来、東日本のほぼ全域で空間線量が高止まりし、殆ど変化してない。

 下図は、事故発生時から6月末まで空間線量の変化をプロットしたものだ(福島市のデータは4月6日以降のみ、それ以前は「欠測」)。5月はじめから空間線量に大きな変化は認められない。事故発生直後に福島第一から放出された放射性物質のうち放射性Cs(Cs-137およびCs-134)が地表面に降下・沈着し、それぞれの地域で、そのまま「固定」されたものと見てよい。東日本の環境が、程度の差こそあれ、広範に放射性Csに汚染されてしまい、少なくともここ数年にわたってこうした汚染状況が継続されることになってしまったわけだ。

  注) 上記のデータのうち、福島、東京のについては「文科省都道府県別放射能水準調査結果」、茨城県のについては、「茨城県環境放射線監視センター」のものを用いた。

環境が放射能汚染されると何がおきるか?: もう30年以上前の話であるが、当時ヨーロッパに長期に滞在・在住した日本人の体内放射能を、彼らが帰国した直後に whole body counter で、測定されたことがある。その結果は、測定の対象とされた日本人の体内放射能のレベルは「通常の」日本人に比べ高くなっていた。

この測定結果を発表している「報告書」をさがしてみたが、残念ながら紛失してしまって私の手元には残っていなかった。当時の状況を知ると思われる知り合いにも尋ねてみたが、該当する「報告書」を知っているひとはいなかった。

この話、私のおぼろげな記憶に基づくもので、なんともたよりない話ということになってしまっている。

しかしながら、私の記憶では、こうした測定結果があったことは確かなことである。間違っているかもしれないが、安斎郁朗さんが発表されたものではなかったか、という記憶がある。

あくまで記憶ではあるが、この事実、かなり重要な事柄を我々に教えているのではないか、と思う。

ヨーロッパに滞在・在住した日本人が体内汚染していた原因は、英国・ウィンズケール(現セラフィールド)(あるいは仏国・ラアーグの再処理工場?)から(計画的に)放出された放射能により黒海が汚染され、そこで獲れた魚を「日常的」に食していたことによるものだ。日本人だから、平均以上に魚を多く食べていたということではなく、ヨーロッパに住む「平均的な」食生活を送っていた結果と考えるべきものと思う。

この事実が教えることは、ひとたび我々の居住する(自然)環境が放射能汚染されてしまうと、「平均的な生活者」を放射能で汚染してしまうことになる、ということだ。我々「生活者」は、環境から切り離して考えるされる存在ではなく、「環境を構成する一部」として考えるべきなのではないか。

上述したように、福島第一により東日本の広い範囲で、我々の環境(地表面)が放射能により汚染されてしまっている。この環境の汚染に対応するかたちで、なんら手をうたねば、我々「生活者」の体内は放射能に汚染されてゆく。手をうつといっても、かなり不自然なことをやることになる。

いかにして我々「生活者」の体内汚染を防ぐか?: 福島第一事故により、我々の環境は大きく汚染されてしまった。表現が正確かどうかはわからないが、この汚染状況、「覆水盆に返らず」という状態にある。こういう状態で、我々「生活者」の体内汚染を防ぐ、すくなくとも緩和するにはどうしたら良いか?

方法は次の二つしかない:

  • 我々の生活パターンを変更する(食品摂取の方法、生活圏の制限など)
  • 環境中に撒き散らされた放射能を除去(除染作業を行うなど)

どちらも大変な事業だ。

気の遠くなるような話が待っている。とにもかくにも、こうした措置が効果的に行われるか否か、その前提として、環境中の放射能の分布がどのようになっているのか正確な情報を取得する必要がある。

思いつくまま書いてみたけど、どうも頭のなかがまとまらない。
ま、いいか。


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