Archive for the ‘読書・読後感’ Category



放射線障害のメカニズムからの説明(児玉龍彦の解説を読んで)

Friday, June 7th, 2013

「低線量被曝のモラル」を読んだ。そのなかに、島園進(東大教授:宗教学)そして一ノ瀬正樹(東大教授:哲学)が聞き手になって児玉龍彦(東大アイソトープ総合センター長)から放射線被曝、除染などの話を聞く鼎談(「討論2 何をなすべきか?」)が収められている。
ここで、児玉龍彦が放射線によるがんの発生メカニズムについて非常に興味深い話をしている。チェルノブイリにおける甲状腺がんの子どもたちの染色体が特異的なかたちで障害をうけているということ、さらにはこの特定の領域(バリンドローム変異がおこる領域)でおこったがんは放射線障害の可能性が高いというのだ。
もし、この話が正しいということになると、放射線障害に起因するがんは他のがんと区別できる、言い換えると非特異的ではなくなってしまい低線量被曝の健康影響の評価のありかたがいっぺんに変わってしまうことになる。これは大変な話だ。
メモしておくことにした。 (続きを読む)



「原発災害とアカデミズム 福島大・東大からの問いかけと行動」を読んでみた

Wednesday, May 29th, 2013

福島第一事故の発生から2年が経過した。原発事故の発生以来、さまざまな視点・立場からこの原発事故が語られている。本書は、原発事故に対し、学者・研究者が、いかに向き合ってきたか。そして、アカデミズムが本来果たすべき責務を果たすことができたかどうか。福島大、東大の研究者たちが、それを、検証しようとしたひとつの記録(論文集といってよいか?)といってよい。

本書全体を通じて、原発事故による放射能汚染そしてそれによる放射線被曝という状況は、どのように考え対処すべきなのか、非常にラディカルな視点を提供する。原発災害に対する「科学」の立ち位置を鋭く検証する。深く考えさせられた。印象深かったところをメモしておいた。 (続きを読む)



伊藤守著「テレビは原発事故をどう伝えたのか」を読んでみた

Tuesday, May 21st, 2013

2年前の東日本大地震そしてそれに続く福島第一原発事故にみられるような広域の「災害」に遭遇したとき、われわれは何から必要な情報を取得するのか。大部分の情報は、テレビ報道を通じて取得され、それに依拠しながら、意思決定することになる。

本書は、福島第一原発事故のメディアの役割を検証するため、「テレビ報道に限定して、しかも事故発生から初期の七日間に限定して、ドキュメントとして記録し、検証を加え(p.255)」たものだ。今回の災害・事故に際して、テレビ報道がわれわれの期待に応えるものであったかどうか、そして課題はどのようなものであったのか。本書を読みながら考えてみた。 (続きを読む)



今中哲二著 「低線量放射線被曝 チェルノブイリから福島へ」を読んでみた

Wednesday, May 8th, 2013

福島原発事故の発生以来、放射線被曝に伴う健康影響を題材とする書籍が多数出版された。これら書籍には、放射線による健康影響をことさらに大きく見せるものから、過少に見せるものまでさまざまであった。

それらのなかで、本書は、長年にわたり放射線の測定・評価に取り組んできた著者によるものであり、福島原発事故による環境汚染そしてそれに伴う低線量放射線被曝の実相を平易かつ科学的に解説している。一読の価値があると思う。

本書を読んで印象に残った部分を転載し、メモとして残しておいた。 (続きを読む)



「福島原発で何が起こったか ―政府事故調技術解説―」を読んでみた

Wednesday, May 8th, 2013

福島第一原発の事故から2年が経過し、これまでに、複数の事故調査報告書が公表されている。こうした調査報告書を全て読むのは、いずれの報告書も長文で、なかなか骨が折れる作業だ。7年前に退職するまで、約30年間にわたって原子力に関係する職場でお世話になったものとして、この事故の実相を理解しておかねばと思い、これら事故調査報告書を少しずつではあるが読み進めているところだ。

そういうなかで、目にしたのが、本書「福島原発で何が起こったか―政府事故調技術解説―」だ。

本書は、私にとって、事故の推移を理解するうえで非常にわかりやすいものであると同時に、事故調報告書を読み進めるうえで助けになるものと感じた。

おすすめの書だ。 (続きを読む)