Archive for the ‘読書・読後感’ Category



小倉志郎著「元原発技術者が伝えたいほんとうの怖さ」を読んでみた

Monday, January 22nd, 2018

久しぶりに近所の公立図書館にでかけた。偶々、本書をみかけた。

本書のタイトル、かなり刺激的である。帯にはもっと刺激的な記述があった。次のようなもの:

原発は、ほんとうにとんでもない怪物だ。あの複雑怪奇な原発の構造を理解しているエンジニアは世界に一人もいない・・・・

読んでみることにした。

一読した感想を述べると、現場作業の持つ皮膚感覚を重視するあまり、あまりにも情緒的な主張に違和感を覚えた、といったところ。 (続きを読む)



岩田昭男著 「Suicaが世界を制覇する」を読んでみた

Monday, June 12th, 2017

iPhone7(日本発売)にSuica(FeliCa方式)が搭載され話題になった。本書は、この動きを、日本独自に発展したSuicaが「ガラパゴス」技術の汚名を返上して世界に打ってでる大きな機会になると主張する。

私自身は電車を利用することは殆どなくSuicaを持っていない。しかし、Suicaに代表されるFelica方式の非接触ICカードがいまや社会インフラの一つとして普及し、さらには、スマホにこのFelicaが搭載され、少額決済が可能になってきたことにはかなりの関心がある。

こうした動きの技術的背景になにがあるのか知りたいということで本書を読んでみることにした。 (続きを読む)



伊藤公一朗著「データ分析の力 因果関係に迫る思考法」を読んでみた

Sunday, June 4th, 2017

社会の動きを理解・予測しようとすると、意識するしないは別にして、事象間の「因果関係」を基礎に考えることになる。「因果関係」には、「風が吹けば桶屋が儲かる」という格言的レベルから、「アメリカの金利が上がれば日本円の対ドルレートは円安にふれる」という新聞の解説記事で見かけるものまでいろいろある。

議論するうえで基礎にする「因果関係」の各々がどの程度正しく、有効なものなのかを判定するのはなかなか簡単ではない。このあたりをどのように考えれば良いのかと思っていたところ、数日前の日経(2017/5/27付)の読書欄に「経済学の輪郭つかむ 数式使わぬ入門書増える」というのがあり、そのなかで本書が紹介されていた。

読んでみた。

期待したほどのものではなかったが、読んだという記録くらいは残しておこうということでメモしておいた。 (続きを読む)



まさのあつこ著「あなたの隣の放射能汚染ゴミ」を読んでみた

Saturday, April 8th, 2017

近所の公立図書館の新刊書コーナで本書をみかけ読んでみた。

本書は6年前の「福島第一原発事故」により発生した「放射能汚染ゴミ」への行政による対応が杜撰で安全性を無視したものであると主張する。「告発」本のひとつといえる。

福島原発事故直後、この事故に関わる書籍が数多く出版されたが、最近はめっきり関連本を見かけなくなった。そのなかで、事故に起因する環境の放射能汚染問題は、注視しつづけていかなければならない重要な課題と思う。

本書で展開される著者の主張に同意するかどうかは別にして、少なくとも、我々がこの問題について考えるうえで、論点を整理するための手掛かりを与えてくれるものと思う。 (続きを読む)



Stephen Witt著「誰が音楽をタダにした?-巨大産業をぶっ潰した男たち」を読んでみた

Saturday, February 11th, 2017

実に、面白い本を読んだというのが私の読後感だ。

原題は、HOW MUSIC GOT FREE – The End of an Industry, the Turn of the Century, and the Patient Zero of Piracy、翻訳本だ。

オーディオデータの圧縮フォーマットMP3の開発、普及、そしてそれがもたらした巨大音楽産業の再編の詳細を描くノンフィクションだ。IT技術の規格・標準化、知的財産権、Webプログラミングの発展が相互に絡み合う物語といえる。

ここで描かれる物語を構成する個々については、断片的にではあるが、私もそれなりの知識を持っていた。しかし、本書を通じて、その全体像を俯瞰することができたように思う。IT技術が産業全般に及ぼしているインパクトの大きさにあらためて気づかされた。 (続きを読む)