Archive for the ‘科学・技術・原子力問題’ Category
Wednesday, August 30th, 2023
日経電子版(8/30 17:31配信)に「中国、訪日旅行取りやめの動き 観光にも「不買」余波」という記事を読んだ。
この記事のリード文を以下に転載しておく:
東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出開始に伴う中国の反発が、中国人の訪日旅行にも影響し始めた。中国メディアは旅行のキャンセルを相次ぎ報じた。中国は9月末に国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休を控える。団体旅行が解禁され、日本で高まった観光需要拡大への期待がしぼみかねない。
当然の流れと思ってしまう。
せっかく日本観光に来てくれた中国の方々には気の毒と思うのだが、福島第一の汚染水の放出により日本産海産物の輸入を全面停止するという中国政府の方針のもとでは中国人の日本訪問は無理だ。政府の方針に反するような態度をとることが無理な中国のかたがたが、この時期に、日本を訪問する気もなくなるのは「理解」できる。
中国政府が日本を含む国々への団体旅行を解禁したことから、コロナ前のインバウンド需要を期待したのはわかるが、中国人の団体旅行による混乱が起きないことは、むしろ、良いことと思ってしまう。
中国人観光客が大挙押し寄せてくると何が起きるかはコロナ前に経験している。個人的な意見で申し訳ないが、日本国内での中国人観光客の傍若無人な振る舞いがなくなったこことをほっとしているというのが正直なところだ。
日本の漁業関係者のご苦労は大変なことと思う。国民挙げて、支援をすることこそ今大切なことなのではとおもうところだ。
台湾からのマンゴウに難癖をつけたり、オーストラリアに対するワイン輸入の手続き複雑化などの嫌がらせをする中国に対し憤りを感じる。
健康被害を及ぼすと考え、いやだと思うひとに我が国の海産物を口にしていただく必要なんてない。
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Sunday, August 27th, 2023
24日から福島第一原子力発電所に貯留されていた原発処理水の海洋放出が開始された。
この措置について、さまざまな議論がされている。多少、原子力の仕事に携わったことがあるものとして、私なりの感想を述べるのもいいのではないかとこの記事を書いた。
私の立ち位置は、今回の処理水放出はやむをえない措置であり、十分なモニタリングを行い、制御したかたち、海洋放出を行うべきものと考えるものだ。10年にもわたってタンクに貯められ、現在も増え続ける汚染水の処理をやらないわけにはいかない。タンクを置く敷地が少なくなり、「廃炉」処理を行うことに支障をきたすということもあるが、それ以上に、タンクのなかに大量の処理水を置くことは制御しない形で、事故的に、海に流れこむ危険性もあるではないかと考える。
貯留タンク中には、「核汚染水」をALPS(多核種除去設備)を用いて処理された処理水が貯留されている。2019年に公表されている「他核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会取りまとめ(案)」には、貯留されている処理水の現状について次のように述べている:
現在貯留しているALPS処理水の約8割には、現時点でトリチウム以外の放射性物質が環境中へ放出する際の基準(告示濃度限度比総和1以下)を超えて含まれている
とし、
ALPS処理水に含まれるトリチウム以外の放射性物質については、・・希釈を行う前に二次処理を行い、トリチウム以外の放射性物質について告示濃度限度比総和1をみたすことを今後の対応方針として決定
している。
ここで述べられているのは、トリチウム以外の放射性核種についてはALPSで処理可能なものであり、これを活用して「告示濃度限度比総和1を満たすまで処理をするとしている。トリチウムはALPSの処理の対象とならないということだ。
こうした処理を前提に、放出対象とする「処理水」がトリチウムを含むものと説明されている。
今回の海洋放出を問題とする議論をながめてみると、いろいろあるが、気になった反対論の二つについてみてみることにした:
ひとつは、「TBS報道特集」での鈴木達次郎長崎大学教授のコメントだ。鈴木教授は福島第一事故発生時まで、原子力委員会委員をつとめ、日本の原子力産業のある意味「旗頭」としての役割を果たしてきたひとだ。以下のようにコメントしている:
他の国がですね危険だ危険だというほうの説明には私は賛成しないのですが、中には放射性物質が入っていますので純粋のトリチウム水とは違うものとして扱わなきゃいけないと思っています。
だから、そういう意味ではですね、ほかの国の原発や他の国の施設からトリチウム水が大量に流れているからこれも大丈夫だという説明は私は間違っていると思います。
二次処理をすれば確かにきれいになっていくと思うので半年なり1年なりもうけて実際にALPSがきちんと動きます。でてきた処理水は明らかに基準値以下になるということを書類ではなく実際にやってみて、そのデータを公開していただくというプロセスがあって初めてじゃあ本格的に放出を始めましょうとなるのがえーあの筋だと思いますね
はい、ご説ごもっとも、としかいいようがない。上述した「小委員会とりまとめ(案)」にきちんと記述してあるではないか、何をいまさらという感想だ。
こんなひとが、日本の原子力政策の中心にいたとは驚きだ。ある意味、がっかりだ。
次に、政治家の発言だ。日本共産党の志位和夫委員長のtwitter上への発信だ。以下のようなもの:
全漁連会長コメント。
「本日、ALPS処理水の海洋放出が開始された。我々がALPS処理水の海洋放出に反対であることは いささかも変わりはない」
「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」という約束を破った首相の責任はあまりにも重い。
汚染水(アルプス処理水)の海洋放出に反対する。
なんのことはない。漁連の説得もきちんとしないで、「汚染水(アルプス処理水)」を海洋放出するのはけしからん。ということを言っているにすぎない。
すこしは、海洋放出が安全であるかないかということを議論したらどうかと思ってしまう。私たちは漁民のみなさんの側にたっていますと宣伝しているだけになっているとしか思えない。
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Tuesday, February 14th, 2023
日経朝刊(2/13付)に原発を60年超えで運転可能とすることを原子力規制委員会が了承した話がでていた。この話、規制委員会委員のひとりの反対を押し切るかたちで、多数決で決めた。東電の大事故の反省から生まれた原子力規制委員会は骨抜きになってしまったとの印象を受ける。
日経記事のリード文を以下、転載:
原子力規制委員会は13日夜に臨時の委員会を開き、運転開始から60年を超える原子力発電所の安全規制に関する新たな制度案と原子炉等規制法改正の条文案を多数決で了承した。山中伸介委員長と他の委員の計4人が賛成し、石渡明委員が1人反対を続けた。規制委が重要案件を多数決で了承したのは極めて異例だ。
本件については、その成り行きを注目していたところだが、残念ながら、規制委員会の責任を放棄するかたちで決着してしまったように思う。残念な話だ。
記事のなかで、原子力安全の専門家である杉山智之委員の発言が紹介されている。この発言、以下のようなもの:
締め切りを守らないといけないとせかされて議論してきた。規制委は独立した機関であり、われわれのなかでじっくり議論すべきだった
このような発言をするなら、議論を深めるために立場を留保することも可能だと思う。この発言、昨年末に誕生した山中伸介委員長体制の規制委員会の体質を示したものと理解。
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Thursday, February 9th, 2023
今朝の日経朝刊(2/9付)に興味深い記事がでていた。この記事、「原発60年超運転、承認を持ち越し -規制委、委員1人が反対 改めて議論へ-」とタイトルされるもの。
以下、記事のリード文を転載:
原子力規制委員会は8日の定例委員会で、原子力発電所の60年超の運転を可能にする安全規制の制度案の決定を見送った。地震や津波の審査を担当する石渡明委員が「安全側への改変とは言えない。この案に反対する」と意見を述べたためで、来週の委員会で改めて議論する。
議論された「制度案」では、
運転開始後30年目から10年ごとに古い原発の安全性を審査し認可する制度で、現行の原則40年、最長60年の規定は原子炉等規制法から削除することになる。
この規制委員会の動きについて、本ブログの二つの記事「原子炉の寿命が青天井になる?」そして「原子炉の寿命延長 いよいよ具体的な動きが」で批判的な意見を述べたことがある。
規制委員会の石渡明委員の反対は当然といえば当然と思った次第。原子力安全の専門家が賛成するのは多少違和感を感じてしまう。
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Friday, February 3rd, 2023
日経朝刊(2/3付け)に放射性廃棄物の最終処分についての小さな記事がでていた。
記事のタイトルは「核のごみ最終処分「政府の責任」-8年ぶりの方針改定案-」。
リード文を以下に転載:
政府は2日、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分実現に向けた基本方針の改定案を与党に示した。改定は8年ぶりで「政府一丸となって、かつ、政府の責任で最終処分に向けて取り組む」との文言を加えた。新たに複数地域で文献調査の実施をめざすとした。
この記事、高レベル放射性廃棄物の最終処分の見通しないが、「政府一丸」「政府の責任」で取り組みますというもの。
なんのことはない、みんなに嫌われている処分場を提供してもらうよう自治体にお願いをします程度の話。
放射性廃棄物の処理方法は「乾式処理」に切り替え、原発敷地に長期保存するしかないのでは、というのが私の見解。
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