Archive for the ‘科学・技術・原子力問題’ Category



福島第一処理水問題にやっと動きが!!

Thursday, August 4th, 2022

今日の日経朝刊(8/3付)に「処理水放出、来夏に延期も -東電、きょう設備着工 廃炉を綱渡り-」という記事がでていた。

記事リード文は以下:

東京電力ホールディングスは3日、福島第1原子力発電所の処理水を放出する設備の工事を4日に始める計画を発表した。まず海底トンネルの掘削やタンクをつなぐ配管設置などの作業に入る。廃炉作業に欠かせない処理水の放出に向けて一歩前進した。一方、工事の完了は当初想定した2023年4月中旬から、同年夏ごろまでずれ込む可能性も明らかにした。

それにしても、いろんな意見が飛び交っているのがこの処理水問題。「汚染水」の放出となると大変だけど、セシウムとかストロンチウムとかを除去した主にトリチウムからなる「処理水」なら海洋放出するのが最も適切な方策だ。

こんなことを決心するために何年も右往左往しながらタンクを増やし続けてきたというのにはあきれる。ただ、本当にきちんと処理された「処理水」かどうかは気になるけどね。

むしろ、海洋放出しないで、このまま敷地内にため続けるというのは海洋放出以上に「安全ではない」だろう。そろそろ潮時といったとこだろう。

海洋放出が安全か非安全かということではなく、処理水放出に伴い心配される「風評被害」ということらしいのだが、「風評」というのは安全性という観点では問題ないのに「危ないかも」という気分を流布するグループがいるということなのだろう。

海洋放出以外の方策を考えるべしという主張があるようだけど、トリチウムを除去する技術というのがどんなに大変なことなのか、少しでも考えてみればわかるはずだ。

とにもかくにも、スタートしたことはいいことだ。ぶれないで海洋放出の路線を堅持してほしい。
 



日本、気候行動ネットワークの化石賞に選出される!

Thursday, November 4th, 2021

グラスゴーのCOP26での岸田首相の演説に対し、世界の環境団体で作る気候行動ネットワークが日本を「化石賞」に選出した。

このニュース、今朝のTBSラジオ森本毅郎スタンバイでつぎのように報じていた(以下、書き取り):

世界の環境団体で作る気候行動ネットワークは2日、地球温暖化対策に後ろ向きな国に送る化石賞に日本を選んだと発表しました。岸田総理が地球温暖化対策を話し合う国際会議COP26で二酸化炭素の排出が多い石炭火力発電の廃止の道筋を示さなかったことを理由にあげました。

気候行動ネットワークのHPにこの化石賞について以下の記述があった。本文と私の拙訳を並べて以下に記しておいた:

Second Fossil of the Day Award goes to Japan

今日の2番目の化石賞は日本に

Japanese Prime Minister Fumio Kishida told the assembled Glasgow crowd that Japan promotes fossil power plants because they are necessary to integrate renewable energy, not only in Japan, but also throughout Asia.

岸田文雄首相はグラスゴーの会議で日本は化石燃料による発電を推し進めると発言。日本とアジア諸国にとって再生エネルギーを開発するために必要とした。

Despite a coal phase out being set as a priority goal for this COP, the land of the rising sun aims to continue using coal power plants beyond 2030 and even towards 2050. Furthermore, Kishida has had deluded dreams of using ammonia and hydrogen as “zero-emission thermal power”. He needs to wake up and understand that these novice and costly technologies are linked to fossil fuel extraction and would leave little chance of meeting the global 1.5C degrees targets. We need real world commitments to halt rising temperatures and a coal phase out by 2030 and not fossil fuel nightmares.

今回のCOPの主要なゴールが石炭の利用を廃止するものであるにもかかわらず、「日出る国」は石炭火力発電を2030年以降どころか2050年にわたってさえ使い続けようとしている。さらに、岸田首相はアンモニアと水素の使用でゼロエミッションの発電を実現しようとするというまやかしの夢を述べた。こうした未成熟でコスト高の技術が化石燃料の採掘に関連づけられるものであり、全地球的な1.5℃の目標になんら合致するものでないことに、彼は気付く必要がある。気温上昇を止め、2030年までに石炭の利用を停止し、化石燃料の悪夢を避ける世界的な現実的公約を必要とする。

岸田首相、大急ぎでグラスゴーにでかけたのだが、環境団体に言いたい放題の悪口を言われたようだ。

この「化石賞」なるもの、環境団体の意に沿わないものに悪口をいうもので、毎日、何か国も選出されている。別に、日本のマスコミのようにいちいち大騒ぎする必要はないのではと思う。

因みに、第二日の「化石賞」は、一番目はNorwayに、二番目が我が日本に、三番目には、Australiaに送られている。
 



今年も「原子力立地給付金」を受け取った

Thursday, October 28th, 2021

一昨日(10/26)、私の銀行口座に「原子力立地給付金」が振り込まれていることに気づいた。

この給付金、毎年10月になると「必ず」振り込まれてくる。

私の自宅が原電の東海発電所から2.5キロの位置にあることから交付されている。変な表現だが、原子力発電所という危険な施設の近くにすんでいるので、「危険手当」が交付されていると考えればいいのかもしれない。

この東海発電所、10年前の大地震以来停止状態が続いており、現在再稼働のための手続きが進められている。稼働していない原子力発電所に対する「危険手当」を受け取るというのは変な話ではあるが、再稼働したときには宜しくっていうことだと理解すればいいのかもしれない。

私自身、この原子力発電所の再稼働には反対の立場。反対しながら、「危険手当」を受け取るというのは節操がない話とは思う。

CO2を出さない発電として原子力が再度注目されてきているが、東日本大地震の惨状を経験したものとしては、簡単には再稼働を受け入れる気にはならないといったところが正直なところ。
 



「核燃料サイクル」維持は幻想、早期に手じまいすべきだ!

Sunday, October 3rd, 2021

自民党の総裁選挙がおわり、岸田文雄が総裁に選出された。明日にも、国会承認を受け、我が国の総理大臣に就任することになる。

総裁になることを期待していた河野太郎は、残念ながら、完敗し、広報本部長という事実上「冷や飯食い」の役職に追いやられてしまった。

総裁選の議論のなかで特に印象に残ったのは、各候補の「核燃サイクル」にたいするポジションだ。河野候補の「核燃サイクルは手じまいすべし」という主張に対して、3人の候補は、以下のように、「核燃サイクル」の維持を主張している(FNNプライムオンラインより転載):

岸田候補:

再稼働しながら核燃サイクルを止めるということは、原発を動かすことは難しくなってしまう。2030年、CO2マイナス46%という目標は難しくなるし、電力コスト自体もはね上がる」

高市候補:

続けなければ、ただのゴミになってしまう。これは安定的なエネルギー供給体制からも逸脱していく。しっかりと、これは核燃料サイクルを進めるべきだ

野田候補:

絶対安定供給というのが電力の使命。それを達成するためには、再生エネルギーという太陽や水や不安定なところによって立つことはできない。ということで、わたしは核燃料サイクルを止めません

これら3候補、本気で「核燃サイクル」の実現可能性を考えているのだろうか? 現実を直視しないで口先だけの主張としか思えない。

高速増殖炉原型炉「もんじゅ」建設の計画は頓挫し、青森六ヶ所村の「再処理工場」も事故続きで、いまだ、運転の見通しも得られていない。どう考えても、「核燃料サイクル維持」を主張することに現実味はない。

そろそろ高レベル使用済み燃料を切り刻み、高レベルの放射性溶液を生み出す核燃再処理に見切りをつける時期にきている。

再処理なしの手段はなくはない。「乾式貯蔵」だ。この方法については、「東海村・村長の『脱原発』論」を読んでみた」を参照してほしい。
 



30年度電源構成 -エネルギー基本計画原案-

Sunday, September 12th, 2021

一月前の日経電子版(7/29付)に「30年度電源構成に死角 点検・エネ基本計画原案 -再生エネ36~36%、太陽光パネル設置場所に限界」という記事がでていた。

我が国のエネルギー政策の基本的な情報のひとつとしてアップしておいた。

この日経記事のリード文とそこに示されていた電源構成図(19年度実績、30年度現行、新目標)を以下転載しておいた。

     
経済産業省が中長期のエネルギー政策を示す新しいエネルギー基本計画の原案を公表した。2030年度の電気を何で供給するのかの構成案が柱で、再生可能エネルギーを大きく増やすのが特徴だ。21年4月に決めた30年度の温暖化ガス排出量を13年度比46%減らす新目標から逆算したもので、個別の対策を積み上げきれず、緻密さに欠ける。電源ごとに細かく分析すると、実現に向けたハードルの高さが浮かび上がってくる。 
   
     

目標とはいうものの、10年後には、ここに示されている電源構成を実現していなければならないなんて、正直、信じられない。

現行目標ですら、その実現可能性には疑問を感じるのに、新目標で、再生可能エネルギーの比率を拡大するというのは絵に描いた餅と言わざるを得ないのではないか。

見通し暗いな。