日本老年学会が「高齢者の定義」変更を提言??

January 6, 2017 – 4:16 pm

日本老年学会と日本老年医学会という組織が「高齢者の定義を変更すること」を提言したらしい。新聞各紙がこのニュースを伝えている。朝日新聞にいたっては一面で報じているようだ。

今朝のTBSラジオの「森本毅郎 スタンバイ!」でも、冒頭で、このニュースを話題にしていた。私、やっと、高齢者のなかまいりをしたと思っていたら、「高齢者の定義」が変わり、そうではなくなりそうなんて思ってしまう。

「森本毅郎 スタンバイ!」でこのニュースをキャスターの遠藤泰子さんが読んでいた。書き留めておいた:

現在、65歳とされている高齢者の定義を75歳以上に見直すよう求める提言を日本老年学会などが発表しました。心身の若返りが理由で、提言では、65歳から74歳を准高齢とし、90歳以上は超高齢者としています。一方で、今回の定義の変更によって年金の支給開始年齢が遅くなることなど社会保障制度への影響がでることを懸念する声もでています。

そして, 補足して

学会は社会保障制度に直接結びつける議論に慎重になるようもとめています。

との話だ。なんともとぼけた議論を「学会」を標ぼうしているところがやっていると感じてしまった。

誰もお願いもしてないのに、「皆さん元気のようですので」高齢者の定義を見直すよう求めますなんてことをいう「学会」、何者だと思ってしまった。

日本老年医学会のHPを覗いてみた。この学会、次のようなものらしい、以下、引用:

 日本老年医学会は昭和34年11月7日(1959年)に第1回日本老年医学会総会(会長:緒方知三郎)が開催され、任意団体としての日本老年医学会が発足しました。以来毎年1回学術集会を開催し、平成27年(2015年)で57回の開催となりました。平成7年3月9日(1995年)には文部省(現文部科学省)の設立許可により社団法人日本老年医学会が設立され今日に到っております。

会員は平成27年においては6,200人に至っております。会員は、生活習慣病、老年病の領域における医療ならびに研究従事者、専門家からなり、成人老年医学に関する諸問題に総合的に関わって参りました。

本学会の目的は、定款に記載しております通り「老年医学に関する研究の振興及び知識の普及、会員相互及び内外の関連学会との連携協力を行うことにより、老年医学の進歩を図り、もって我が国における学術文化の発展に寄与し、社会に貢献すること」です。

文部省が設立許可をした社団法人ということのようだ。そもそも学会なんていうのは、ある種の利益誘導団体という性格を持つもの、というのは私の見解。ただ、「専門家の集団」として、それなりの力を持っていることはたしかだ。

今回発表された提言の概要は「高齢者の定義と区分に関する、日本老年学会・日本老年医学会 高齢者に関する定義検討ワーキンググループからの提言(概要)」と題するpdf文書として読むことができる。

ここでは、定義を見直す意義について以下のように述べている:

高齢者の定義と区分を再検討することの意義は、(1)従来の定義による高齢者を、社会の支え手でありモチベーションを持った存在として捉えなおすこと、(2)迫りつつある超高齢社会を明るく活力あるものにすることです。

調子だけはいいが、意味不明との印象。定義を見直し、老人も働け働け、明るい社会になるぞ、なんて掛け声だけは聞こえてくる。

学会の提言なんて「学者」先生のたわごとと受け流してもいいのではあるが、ありがたい「専門家」のお墨付きということで厚生労働省あたりは社会保障制度を改変するのに悪用するのは目に見えている。

うがった見方かもしれないが、この提言、厚生労働省あたりからお願いされて出されたものではないか、と疑ってしまう。

なお、この提言にかかわる詳細な報告書は後日発表されるということになっているようだ。

人口問題研究でも議論されている高齢の定義
このブログでも、もう3年近く前になるが「50年前の65歳は現在の75歳に相当!!」という記事を書いたことがある。この話、金子隆一 国立社会保障・人口問題研究所副所長が日経に書いた解説記事「人口減少社会の設計図(下)『高齢』の定義、見直しの時』」を読み、メモしたものだ。

ここでメモした話、今回の日本老年医学会の提言している75歳以上を老齢者とする話と合致している。しかし、今回の提言が老人医療を専門とする医者を中心になされているのに対し、このメモは、人口問題を正面に据え議論されており、それなりに学術的な真面目な研究という感じがする。

老齢に伴う認知機能の低下をどう扱う?
「提言」には、「現在の高齢者においては10~20年前と比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が5~10年遅延しており、『若返り』現象がみられて」いる、という。それは確かにそうだと思う。

しかし、こういう『若返り』現象の一方で、高齢になると認知機能が低下する現象、そしてそれが社会問題化している事実はどのように考えればいいのだろう。こちらのほうが、かなり深刻な問題なのではないか?私自身、自らの認知機能の低下はかなり深刻な問題と思っている。

最近、高齢ドライバーによる交通事故の増加が社会問題化している。新定義の高齢者である75歳にならない従来の定義の高齢者が重大事故を起こしている。高齢者に対する免許返納キャンペーンも行われている。70歳になると、免許書き換え時には、認知テストまで受けなければならないようだ。

「高齢」の定義を変えることで、高齢ドライバーによる交通事故は無くなるとでも考えているのか?そんなことはないだろう。「身体的機能」の若返りなんてきれいごとで、高齢社会の問題をひとくくりに議論できるなんて思わない。


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