Archive for the ‘科学・技術・原子力問題’ Category



児玉龍彦著 「放射能は取り除ける」を読んでみた

Wednesday, March 19th, 2014

東日本大地震そして福島第一原発事故の発生から3年が経過した。3年という月日が経過したいまでも、大地震の爪痕は残る。とりわけ原発事故発生により故郷を追われた周辺住民の生活再建に目途が立たないという現実がある。

今、放射能汚染された地域の「除染」をどのように進めるかということが最も大きな課題のひとつとなっている。「除染」により、放射能が大量にまき散らされた福島の地を再び居住可能な地域として再生することができるのか? 難しい課題だ。

近所の公営の図書館で、「放射能は取り除ける‐本当に役立つ除染の科学‐」を見かけた。実に勇ましいタイトルだ。汚染地域の除染は可能と主張しているように思った。さっそく読んでみた。 (続きを読む)



「住民帰還へ「個人の線量」に」なる新聞記事を読んで考えたこと

Tuesday, November 26th, 2013

日経Web刊(11/20 12:26) に「被曝基準を実質緩和 住民帰還へ「個人の線量」に 規制委決定」なる記事がでていた。この記事に触発され、福島第一事故による避難住民の帰還問題のなかで、「住民帰還の可否を決める基準とは何か?」そして「公衆の被曝線量管理に個人線量計を導入することは実効的なのか?」について考えてみた。

この問題を考えるなかで、規制委から公表されている関連資料も読んでみた。この規制委の決定・提言について、私なりの感想をのべさせてもらうと、かなりの無理があり、あまり実効的なものではないように思えた。以下、私が考えたことをメモしておいた。
(この記事、11/27に全文書き直しした。)
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「東海村・村長の『脱原発』論」を読んでみた

Thursday, November 14th, 2013

本書の著者のひとり村上達也さんは今年の8月まで四期16年にわたって、我が国の原子力発祥の地、東海村の村長を務められていた。この原子力の村の村長さん、福島第一事故の後、「脱原発をめざす首長会議」の旗振り役になって「脱原発」を訴えていたことでも有名だ。
本書は原子力の村の首長でありながら「脱原発」を訴える村上達也元村長に対しジャーナリスト神保哲生が聞き手としてその想いをインタビューしたものだ。福島第一事故後、数多くの「脱原発」あるいは「反原発」の著作に接しってきたが、この書は、私にとって、最も説得力のあるもののひとつと感じた。
今、原子力問題を考えるうえで、必読の書ともいえるのではないか、と思う。 (続きを読む)



藤沢数希著「『反原発』の不都合な真実」を読んでみた

Thursday, September 19th, 2013

福島第一事故の後、当然のことながら、反原発の主張が主流になった。原子力に関わる本、著作の大部分は反原発の立場をとっている。
私自身、原子力関連の研究所でお世話になった身でありながら、反原発の立場をとるものであり、このブログのなかでも、その立場からささやかながら記事を書いてきた。
こうした反原子力の流れのなかでも、本書「『反原発』の不都合な真実」は原子力推進の立場をとる。「勇気」ある著作といえるのかもしれない。
著者・藤沢数希の名前は、彼の人気ブログ「金融日記」で以前から知っており、原子力開発推進論者であることも承知している。公立の図書館で、この本をみかけ、彼の原子力に関わる主張の全体を見るのも悪くないと思い、この本を手にとってみた次第だ。
以下、本書をななめ読みした感想をメモしておいた。 (続きを読む)



原子力安全の論理

Saturday, August 3rd, 2013

JCO事故が発生した時の原子力安全委員会の委員長は佐藤一男氏であった。この佐藤氏の著書に「原子力安全の論理」がある。日刊工業新聞社から1984年に「あなたにとって原子力とは――原子力安全の論理」が、そして2005年にはこの改訂版ということで「改訂 原子力安全の論理」が出版されている。

この書、我が国の原子力安全規制(少なくとも2005年に出版された時点で)の考え方を解説したものとしては、最もまとまったものだ。私の書棚にも1984年版が「積んで」ある。そして、改訂版は4年ほど前に近所の図書館から貸出して読んだ記憶がある。なるほど、と思いながら読ませて頂いた。

最近、福島原発事故を経験した目であらためてこの本を読み直してみた。いろいろなことを考えさせられた。そのすべてを書くというのは容易ではない。とりあえず、読んだという事実だけでも記録しておくことにし、多少のメモを残しておいた。 (続きを読む)