大豆先物相場と米大統領選挙
February 15, 2009 – 11:01 am昨日の日経(朝刊)に面白い記事を見つけた。「市況の法則」と題する連載記事(といっていいのかな?)で、シカゴの大豆先物が米大統領選挙のある年に高騰しているという話が紹介されている。昨年の暮れあたりまで大豆が高騰し、納豆の1パックあたりの量が減るなど我が家の家計にも影響したことは記憶に新しい。さて、本当に、米大統領選挙のおかげで大豆先物価格は高騰したのか?
日経記事の価格変動グラフ: 日経の記事に示されているグラフは下に示すようなものだ。1980年から2008年までのほぼ30年のシカゴ大豆先物の変化と米大統領選挙の年が重ねて示されている。
この図から何を読みとる?: この図だけを眺めると、確かに米大統領選挙があると大豆相場は高騰している。昨年のように極端に高騰する例は異常な感じがするものの、確かに米大統領選挙のある年は大豆相場は高騰する傾向が見てとれる。このあたりの話、この記事では、次のように紹介されている:
大豆やトウモロコシなど穀物の国際相場を長期的に振り返ると、ほぼ四年の周期で高騰している。米国の大統領選挙がある年に大幅に上昇した例が多い。・・・・ 大統領選挙時に穀物価格が高騰することは、翌年1月に就任する新大統領にとってプラス材料になる。農家の収入増と経営安定をもたらし、内政を安定させるためだ。
なるほどと思う。最近、穀物の価格は一息ついたとはいえ、昨年高騰したときには、その原因を、地球温暖化問題 ――> バイオマスエネルギー ――> 高騰という図式で説明する報道があったように記憶している。この記事から、「ブッシュめ、大統領選挙を控えて意識的に穀物価格を上昇させたのか」、と考えることもできそうだ。
穀物相場高騰の本当の理由: ここまでは、穀物価格と政治的な操作の関係が明らかなように感じる。しかし、この日経の記事の真意はそこにはなかった。記事では、
・・・・「穀物相場を政治的に動かすのは難しい。」(穀物専門商社、ユニパックグレインの茅野信行社長)・・・・(穀物相場の変動は)米国での気候変動が大きく影響している。・・・・(エルニーニョ、ラニーニャといわれる海水温の変化により)地球表面の大気循環が変化し、世界中で天候異変が起きやすい。・・・・三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は、「太平洋東部・赤道域の海水面温度は三年半の周期で上下している。」と指摘する。
と、穀物相場高騰の理由は「海水面温度の周期的な変化」がたまたま米大統領選挙のある年に重なったということということだ、と説明されている。
統計的な相関、必ずしも真にあらず!: この日経記事をネタにこのエントリーを書いたのは、穀物相場の変動について解説を試みようとしたからではない。もっともらしく統計的な相関が示されると、いかにも「科学的」な説明であるかのように感じる危険を指摘したいと思ったからだ。真に科学的な態度を持とうとすると、やはり底に流れるメカニズムをきちんと把握する必要がある。
それにしても、昨年の穀物価格の高騰のすさまじさは気象の変動だけでは説明できないのではないかと思うのだが、・・・・。科学的に現象を分析・評価するというのはそう簡単なことではない。