教育問題:学術会議「要望」を読んでみて

June 2, 2008 – 1:33 pm

我が子が高校生ということもあり、教育問題の行方、あり方について大きな関心を持っている。このブログでも何回か教育について考えてきた。OECDのPISA報告で、日本の子どもの学力、特に、科学リテラシーに関わる学力の低下が明らかになり、教育の現状、日本の将来にとって大変な状態、とマスコミなども大きく取り上げている。この問題、私にとって、今ひとつ、その所在が掴みきれないという感があった。そんななか、日本学術会議の「要望」:「これからの教師の科学的素養と教員養成の在り方について」に、現在の公教育、特に科学教育が抱える問題が指摘・議論されていることを知った。これを読み、私なりに問題をかなりクリアに捉えることができた感じがする。教育問題を考えるうえで、とても参考になる資料だと思う。

昨年の6月22日付けで、日本学術会議により「これからの教師の科学的素養と教員養成の在り方について」と題する「要望」が発表されている(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-y1.pdf)。 この「要望」のとりまとめは、学術会議の「教師の科学的素養と教員養成に関する検討委員会」だそうだ。この委員会のメンバーは、教育学の一線で指導的な役割を果たしている学者・研究者からなっている。メンバーのなかには、このブログで、以前、議論した「日本のこれから―学力(NHK)」(ここ)に出演していた佐藤学・東大教授の名前もある。

この「要望」における我が国の教育の現状、特に教員の状態に関わる分析を、私なりに、多少、乱暴にまとめると、以下のようになる:

戦後しばらくの間、我が国の教員養成における教育レベルは世界最高水準にあった。しかし、いまや、それは先進諸国のなかで最低レベルにまで低下してしまった。これまで、日本の教師の資質と能力の高さを支えてきた教員採用競争率の高さと給与の高さという二つの基礎は、いずれも崩壊してしまった。教職は労多くして報いの乏しい職業へと転じつつある。

現代社会における科学技術の急速な発展と社会問題の複合化の下で、そうした状況に相応しい科学的教養を持つ教員が求められているにも関わらず、それに必要な教員教育とその評価を十分に行うためのシステムがない。抜本的な改革が必要だ。

といったところか。

簡単にいうと、「日本の公教育、学校の先生の質が著しく低下してしまって、とても科学技術の進歩についていけるだけの科学的素養を持つ先生がいなくなってしまっているし、先生がそうした素養を育むだけの条件も不十分」ということになる。

どうも、日本の教育、NHKの「日本のこれから―学力」で行われていたような「床屋談義」で、かたがつくような事態ではなさそうだ。前にも書いたが、教えるべき「読み、書き、そろばん」の内容が変化しているのに、教える側がそれに対応できていないようだ。


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