地球温暖化防止は産業構造変革の「錦の御旗」

February 7, 2009 – 11:52 am

2月6日付け日経(夕刊)のコラムに「石器時代はなぜ終わったのか」というタイトルで、IEA(国際エネルギー機関)事務局長の田中伸男氏のコラムがでていた。現在の世界不況をどのように捉え将来をどう展望すべきか、という点で実に示唆に富んだものであった。サブプライムローンを発端とする今回の金融危機と地球温暖化問題など世界的な変化をどのように捉えればいいのか、私のなかでモヤモヤとしていたものを整理させてくれたように感じる。

田中伸男氏のコラムは、筆者とアル・ゴアとの話を紹介したものだ。

アル・ゴアに対し、「地球温暖化防止に世界が真剣になればCO2に高い値段がつきエネルギーの消費者価格は高くならざるを得ない。それは省エネや代替エネルギー開発を進め」ることになると説明したことに対し、アル・ゴアが「なるほど、石器時代は石がなくなったから終わったのではないのですね」とヤマニ元サウジ石油相の言葉を引いて応えたという。

地球温暖化防止は産業構造変革の「錦の御旗」: この議論、地球温暖化防止という「錦の御旗」をもって化石燃料の価格を上げれば、省エネ技術、代替エネルギー開発に弾みがつき、現在の石油大量消費をベースとする産業構造変革のドライビングフォースとなる、という主張と理解した。地球温暖化防止問題は、精神論で解決しようとするのでなく、化石燃料の大量消費が将来もたらすことになる地球環境への負荷を前もって(炭素税などという形で)その価格のなかに織り込むことにより産業構造の変革を後押しすることになる。

さらに、田中伸男氏は、次のように続けている:

 石器時代と同様に、我々も、地球に石油がいくら残っていようとも、自らの意思で石油の時代を終わらせることができる。自動車のエンジン(内燃機関)は安い石油と相まって二十世紀を象徴する技術革新であった。今、世界中の自動車産業がそろって歴史的苦境にあるのはサブプライム問題に端を発する世界不況によるが、長期的にみれば二十世紀を通じた石油低価格時代がいよいよ終焉にむかっている象徴かもしれない。既に我々の前に、石器を放逐した土器、青銅器や鉄器にあたる電気自動車、水素燃料電池、太陽電池、風力発電などが徐々にその姿を現しつつある。

この議論、示唆するにとどまっているものの、今回の世界的不況を「長期的にみれば二十世紀を通じた石油低価格時代の終焉」を象徴するものと捉えている、と思う。だとすれば、我々は、産業構造の大きな変革のなかにあるわけだ。その変革の底に流れるものは、このブログで考えてゆこうとしている「科学技術の進歩」にあるに違いない。


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