兵庫県知事選挙の結果をみて思ったこと

November 18, 2024 – 11:34 am

兵庫県議会から不信任決議を受け失職した斎藤元彦元知事が、失職に伴い行われた兵庫県知事選挙で再選された。想像すらされていなかった知事再選に驚きが広がっている。

日経朝刊(11/18付け)には、「斎藤氏、SNSが原動力 兵庫知事選 若者票、稲村氏の3倍」で、今回の選挙がSNSによる活動が斎藤候補の勝利に大きく寄与したと報じている。

記事の一部を以下に転載:

パワハラ疑惑などを内部告発された問題で不信任決議を受けた斎藤氏は、失職した直後から各地の駅前に立ったが、聴衆はまばらだった。だが、告示後の第一声には数百人が集まり、その後も数は増えた。攻勢の原動力となったのは、SNSへの投稿を担う約400人のスタッフだ。

SNS選挙の様相を以下のようにも伝えている(同じく転載):

SNSでは誤った情報も拡散された。稲村氏について「外国人参政権を推進する」「県庁舎を1000億円かけて建て替える」といった情報が広がり、同氏はホームページに否定するコメントを掲載。街頭では「ネットの世界ではデマやレッテル貼りが横行している。ネットには負けない」と繰り返した。

「斎藤氏は既得権益集団と闘っている」という対立構図を主張する投稿も相次いだ。

この日経記事にみられるように、今回の選挙がSNSによる誤情報、デマの拡散が大きく作用したと報じられ、選挙結果を憂慮すべき事態とみる向きもあるようだ。

私自身の感想は少し異なる。

選挙の1週間前くらいから、大手メディアの稲村候補が優位という報道に対し、ひょっとしたら斎藤候補の知事返り咲きもあるのではないかと思っていた。単なる印象でしかないのだが、兵庫県の行政に対する住民の不信感というものがかなり大きなものではないか。そして、兵庫県議会の不信任決議に至るなかで、大手マスコミによる斎藤候補の知事としての「資質」を疑う過度の個人攻撃が斎藤候補の側に有利に働くのではないかと思っていた。

振り返ると、斎藤知事の失職は、パワハラ疑惑などの内部告文書に端を発したものである。この告発文書は、当初、県の前西播磨県民局長が、(おそらく匿名で)一部の報道機関に送付したものであった。私の感覚では、こうした告発文書というもののなかには、ある種の「怪文書」といったものが多くあると思う。この文書に対する「犯人捜し」は、私が知事の立場であっても行う。知事を非難する「怪文書」流布には、当然のこととして、対抗手段をとる。

のちに、この告発文書は、「公式の」公益通報制度を通じて通報されることになったが、「怪文書」流布と疑われる行為のあとに公益通報という手続きが行われるというのには違和感を感じる。

公益通報に対して、調査結果が出る前に告発者の県民局長が懲戒処分を受けたというところから、百条委員会が設置され、その妥当性が審査されることになった。この百条委員会の審査のなかで、証人として出頭を求められた告発者が自殺という事態が発生。告発者は「死をもって抗議」との遺書を残して自殺したという。この告発者の自殺について、斎藤知事には「道義的責任」が追及された。そして、知事の「道義的責任」との抗議を受け入れない態度などをもって、県議会議員全員一致の知事不信任ということにいたった。

少し離れて、一連の兵庫県議会の流れを見ると、ある種の「出来レース」という印象すら受けてしまう。「公益通報」の取り扱いを巡り、知事の県政における主張、振る舞いの全てを否定するというのは、知事を含む県幹部を批判・叱責をする儀式となってしまっている。こうした流れが、逆に、県議会の動きに対する不信感を生む結果となった。

SNSによる情報戦が、斎藤候補が知事に再選されたことが強調されるが、ベースには、県議会、それを支える既存勢力に対する、兵庫県民の不信感が背景にあることは忘れてはならない。

とまあれ、選挙をめぐる情報の流れは、これまでとは大きく変化している。
 


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