素人的経済観測:JTの好調は海外展開というのだが・・・

June 15, 2012 – 1:46 pm

 日本の製造業の進むべき道ということで、興味深い記事を見かけた。日経(6/3朝刊)の「時価総額 JT, NTTを逆転 ホンダにも急接近」と題する記事だ。この記事には、右の図と表(JT、NTT、ホンダの時価総額のここ4年の変動、12日終値ベースの時価総額ランキング)が掲げられていた。このJTの好調さの要因は海外展開を軸にした成長性にあるようだ。

が、しかし・・・。多少のうしろめたさも感じてしまう、この記事。

日経記事のリード文と興味深く感じたところを、以下抜粋:

 日本たばこ産業(JT)の時価総額が12日、終値ベースで初めてNTTを上回った。・・海外展開が順調な一方で、景気変動の影響も受けにくい「グローバル・ディフェンシブ銘柄」として見直されている。 ・・・
JTやNTTはともに旧国公社が母体で、収益が安定したディフェンシブ銘柄の代表格。明暗が分かれた要因は、海外展開を軸にした成長性の違いだ。JTは英ガラハー買収などを経て、海外で収益の半分を稼ぐ体質に変化。
JTの海外でのたばこ販売は数量ベースで7割がロシアなど新興国。・・世界各地で現地生産しており、為替変動にも強い。
グローバル展開が進んだ他の製造業に比べ強みなのが安定性。たばこ受容は景気で左右されにくいうえ、JTを含む上位3社が世界シェアの大半を握る。

海外展開を軸にした成長性を求めるのが今後の日本の製造業のとるべき道、というのは良く聞くところだ。素人的な感覚からいっても当然と映る。さらに、対象とする市場の7割がロシアなどの新興国、さらには世界各地で現地生産をしているなんて聞くと、こんな模範的な製造業が日本にもあったのか、と関心してしまう。JTを見習って「がんばれ、日本!」なんて叫びたくもなる。

しかしだ。よくよく考えてみると、JTの取り扱っている商品の主だったものは「たばこ」ではないか。悪く言えば公認の「麻薬」(依存性の高い嗜好品と言い換えたほうが良いか?)だ。

「たばこ」に「麻薬性」があるからこそ、「たばこ受容は景気で左右されにく」く「安定」している、ということだ。多少、表現は悪いが、「貧しい新興国の国民を相手にこうした『麻薬』を売りさばいて稼ぐ」というのも、JT好調のひとつの理由ではないか・・・・。

禁煙進行中の私としては、禁煙の困難さは良く知っている。このブログでも何回か禁煙について書いた。

日本学術会議は、タバコの害について、提言までおこなっている。
我が国の厚生省は、禁煙キャンペーンを行っている。
いまや、たばこの健康被害、影響については国民の中に浸透してきている。 などなど

そこで考え込んでしまった。国内で、喫煙による健康被害、そしてその麻薬性(依存性の高さ)について議論しながら、国外、特に新興国を相手に、それで商売するというのは、モラルの問題として、どうなのだろう。

日本人として恥ずかしい話しではないのか・・・?

JTの筆頭株主は、現在のところ、日本国の財務大臣だ。発行済株式総数に対する財務大臣の所有株式数の割合は、実に、50%を超えている。

なんとも、すっきりしない話しだ。


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