Archive for the ‘読書・読後感’ Category



「東海村・村長の『脱原発』論」を読んでみた

Thursday, November 14th, 2013

本書の著者のひとり村上達也さんは今年の8月まで四期16年にわたって、我が国の原子力発祥の地、東海村の村長を務められていた。この原子力の村の村長さん、福島第一事故の後、「脱原発をめざす首長会議」の旗振り役になって「脱原発」を訴えていたことでも有名だ。
本書は原子力の村の首長でありながら「脱原発」を訴える村上達也元村長に対しジャーナリスト神保哲生が聞き手としてその想いをインタビューしたものだ。福島第一事故後、数多くの「脱原発」あるいは「反原発」の著作に接しってきたが、この書は、私にとって、最も説得力のあるもののひとつと感じた。
今、原子力問題を考えるうえで、必読の書ともいえるのではないか、と思う。 (続きを読む)



藤沢数希著「『反原発』の不都合な真実」を読んでみた

Thursday, September 19th, 2013

福島第一事故の後、当然のことながら、反原発の主張が主流になった。原子力に関わる本、著作の大部分は反原発の立場をとっている。
私自身、原子力関連の研究所でお世話になった身でありながら、反原発の立場をとるものであり、このブログのなかでも、その立場からささやかながら記事を書いてきた。
こうした反原子力の流れのなかでも、本書「『反原発』の不都合な真実」は原子力推進の立場をとる。「勇気」ある著作といえるのかもしれない。
著者・藤沢数希の名前は、彼の人気ブログ「金融日記」で以前から知っており、原子力開発推進論者であることも承知している。公立の図書館で、この本をみかけ、彼の原子力に関わる主張の全体を見るのも悪くないと思い、この本を手にとってみた次第だ。
以下、本書をななめ読みした感想をメモしておいた。 (続きを読む)



影浦峡著「3.11後の放射能「安全」報道を読み解く」を読んでみた

Sunday, June 30th, 2013

福島第一原発事故により東日本一帯が「放射能まみれ」になった。そうした状況のなか、報道メディアを通じ、放射能の汚染と健康被害の関係についてさまざまな情報が流された。あの混乱した状況のなかで、我々の関心は自からが判断・行動する上で必要な「確かで正確な」情報をいかに見極め、そして得るかということであった。

本書は、事故発生から1,2ヶ月間にわたる報道内容を、メディアを扱う専門家の目から分析し、その問題点を明らかにしようとしたものだ。

本書を読み終え、感想を一言、といきたいところだが、どうも釈然としない印象が残ったというのが正直なところだ。

一応読み終えたということで、少しばかり、本書とのかかわりで考えたことをメモしておいた。 (続きを読む)



安富歩著「原発危機と東大話法―傍観者の論理・欺瞞の言語―」を読んでみた

Tuesday, June 18th, 2013

ほぼ2週間前、安富歩が早川由紀夫群馬大学教授の「毒米」発言についてコメントしているのを読んだ(「原発災害とアカデミズム」を読んでみた)。そこで、「なんとも、私が忘れていた『青臭い』議論ではないか。心が洗われる」と感想を述べた。かなりの衝撃を受けたのだ。
さっそく、安富歩の著書をさがした。近所の公立図書館でみつけたのが本書だ。
読んでみた。予想通りの「青臭い」議論が展開されている。40年も前の私の学生時代によく聞いた「ラディカル」なる言葉・表現がぴったりの議論だ、と思った。
原発問題に限らず、我々の生きている日本という国・社会の在り様について、深く考えさせられた。
気づいたことなどをメモしておいた。 (続きを読む)



斉藤 誠著「原発危機の経済学―社会科学者として考えたこと―」を読んでみた

Tuesday, June 11th, 2013

本書の出版は、福島第一事故の発生からおおよそ半年後の2011年10月ということで、あの大事故に触発されて書かれた一連の書籍の一つに分類することができる。数多く出版されている関連本のなかで、本書は、現役の経済学者が正面きって事故の原因、さらには我が国の原子力政策を議論したものとして極めてユニークなものだ。我が国の今後の原子力のありかたを考えるうえで、一読の価値はあると思う。

私自身、7年前まで原子力関連の研究所でお世話になっていた。そういうこともあり、門前の小僧程度には、原子力、そして放射線被曝のイロハを身につけているものと自負している。そうした目から見て、著者は短時間に原子力の基本的な構造・構成について理解を深め、そのうえで今後の原子力事業のとるべき道について深い洞察をしている。

本書で、興味深く感じたところをメモしておいた。 (続きを読む)