気になったニュース: 最近の雇用状況の改善は本物なのか

May 31, 2017 – 1:42 pm

今朝(2017年5月31日)のTBSラジオ森本毅朗スタンバイで、最近の雇用情勢の改善について報じられていた。なんでも、有効求人倍率がバブル期以来だという。

厚生労働省が昨日発表した4月の有効求人倍率は1.48倍で1990年7月に記録したバブル期の最高値を上回りました。また、2018年春に卒業見込みの大学生の就職内定率も急上昇しています。

コメンテータ渋谷和宏さんの解説
このニュースに対し、この番組のコメンテータ渋谷和宏さんが解説していた。興味深い議論だったので、多少、長くなるが、書き取っておいた。要約を以下に記す。(注意:以下の要約、正確さについては保証できない。悪しからず)

今回発表されている有効求人倍率は数字を見る限り大変なものだ。バブル期のピーク1990年7月に1.46倍だったものが、今回は1.48倍になっている。

この数字の背景には、実は、日本経済の構造的な問題がある。労働の担い手、生産年齢人口(15~64歳の働き手)が減少している。結果として、求人が増えていること以上に、求職者が減っているということになっている。

全業種の有効求人倍率は1.48倍であるが、建設とか介護などの業種を見ると3倍を超えている。物流も高くなっており、人を手当できない状況にある。結果として、物流では、宅配便が象徴的であるが、サービスの水準を維持できなくて、企業としては厳しいし、我々もサービスを享受できないくなっている。

就職内定率が急上昇していることであるが、リクルートキャリアの調査によれば、5月1日時点で、内定を持つ大学生の割合を示す就職内定率が35.1%ある。これは。前の同じ時期と比較して10.1ポイント上昇している。もうすでに内定しているひとのかずというのが、昨年に比べて、急速に増えている。

企業側は大卒を求めているのだが、就職希望者が少ないという状況に直面している。

従業員300人未満の中小企業では、大卒・大学院生卒42万5,600人を求めている。これに対し、就職希望者は66,000人しかいない。

大手を含む流通業では、大学・大学院生卒業予定者を30万2千人を求めているが、これに対し、就職希望者は26,000人しかいない。6人から10にを採用したいのに、1人しか確保できないという状況になっており、サービスの水準を維持することが極めて困難になっている。

今後も、年間50万人の働き手が減るという状況は続くことから、さらに厳しくなってゆくと考えられる。

この対策には、外国人労働者に目をつけるしかないかもしれない。ローソンでは、ベトナムにローソン大学というのをオープンして、働き手を研修している。こういう動きが、これから、活発になってくると思われる。

さらには、Aiとかロボットという労働力を代替してゆくという技術開発が急がれる。

有効求人倍率の数字が史上最高になったというのは、深刻な労働力不足を反映したものだ。

私の感想と印象、「おもてなし」文化の見直しが必要!
コメンテータ渋谷さんの解説、なるほどと思わせる。

有効求人倍率が史上最高を記録したということ自体は「めでたい」ことには違いない。有効求人倍率の上昇を生産年齢人口の減少に求めるというのは、マクロ的に見たら正しいとは思うが、問題は別にあるのではないか、との印象を持つ。生産年齢人口の減少のなかで、一定の経済規模を維持しようとするなら、有効求人倍率が増加するのは健全なことだ。

むしろ、業種別の求人倍率がいびつになっているということのほうが大きな問題だ。建設・介護、物流といった業種においては、「提供されるサービスへの対価が正当ではない」ということが、より重要な問題としてあるように思う。

そこで思いおこされるのは、東京オリンピック招致の際に流行語になった「おもてなし」というあれだ。日本のサービス、「おもてなし」が素晴らしいというという話はされたが、実は、素晴らしサービスに、それに見合う対価が支払われているかどうかを考えると疑問を感じる。

そろそろ、「おもてなし」文化なんて発想を見直す時期にきているのではないか、なんて思ったりする。
  


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