B. KILDAY著 「NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生」を読んでみた

February 10, 2019 – 12:21 pm

ここ数年で体験したヨーロッパのドライブ旅行ではGoogle Mapsには随分お世話になった。ひと昔前にこうしたドライブ旅行をしようとするときはミシェランの地図とガイドブックが定番、必須アイテムだった。旅行の形も様変わり、今は、iPhone上のGoogle Mapsさえあれば用が足りる。

以前から、この偉大な「情報システム」Google Mapsの開発について詳しく知りたいと思っていた。 2週間前の日経の読書欄に本書のタイトルを見つけ、早速、購入して読んでみることにした。

興味深く読むことができた。Googleが米国誕生のIT企業を呑み込んでゆくさまがよく描かれているように思う。

本書は、Google Mapsプロジェクトのマーケティング担当をしていた著者の回想といったものだ。

以下、本書を読むなかで印象の残った部分をメモしておいた。

Google Mapsの源流:のひとつにクリップマッピングとよばれるグラフィックツールがあったようだ。このツール、計算機上で必要な画像データを抽出・選択し高速で滑らかに3D画像を描画する。ゲーム、航空機、原子炉のシミュレータなどの制作に使用されるものであった。

このグラフィックツールを活用してNASAが無料で公開していた地球の画像データなどを描画する地球デジタル地図の原型ともいうべきCTFLYが開発される。このCTFLY、宇宙空間から地上(指定した住所地)までを滑らかにズームイン表示するというものだ。更に、重要なことは、このCTFLY、PC上でこうした動画を表示することが可能だった。

CTFLYはクリップマッピングを扱うイントリンシックの技術者により開発されたものであったが、その性能は驚くものであったが、イントリンシック本来の業務から外れたものであるため、ここからスピンアウトすることになる。このスピンアウトしたCTFLYのCEOとなったのがジョン・ハンケだ。ジョン・ハンケは、Keyholeを設立し、そこで衛星画像、航空写真、地図データの描画ツール Keyhole Earthviewerを開発する。開発当初、Keyholeのメンバーは5人という小規模ベンチャーだったという。

このKeyhole Earthviewerは、2003年の米軍のイラク侵攻を報じるCNNの報道番組で状況分析のツールとして用いられ大ブレークし、ディジタル地図の一翼を担う位置を獲得する。

GoogleによるKeyholeの買収
Keyhole EarthviewerがGoogleの目にとまり、買収話が持ち上がる。

Googleも、Keyholeも設立年は1999年と同じものであったが、買収話のもちあがった2004年にはGoogleはすでに情報産業界に確固たる地位を確立しており、新規上場の手続きが進んでいた。Keyholeにとっては、この買収は、千載一遇のチャンスと言えるものであった。

KeyholeのCEO、ジョン・ハンケと買収側Googleとの買収交渉の場面が描かれている場面がある。そこでGoogleの創業者ラリー・ペイジの発言が次のように紹介されている:

これ(キーホールアースビュアー)は、グーグルのコアになるものだと考えています」とラリーは言った。「地図や地理データを中心に、あらゆる種類のデータを整理することができるでしょう。
あなたたちのチームを圧倒するほどの画像データを提供することを約束します」とエリック(CEO)が付け加えた。(pp.159-160)

ここにGoogle Mapsの現在の姿をみることができるように思える。

Webブラウザ上のツールからiPhone のキラーアプリへのGoogle Mapsの展開:
Google Mapsは当初、Webブラウザ上のサービスとして展開されていた。Webブラウザ上のGoogle Mapsでは、その基盤技術としてAjaxが用いられていた。

Ajaxにより、「ユーザが見ているウェブサイトの画面を崩さないまま、バックグランドで他のデータを読み込むことができるようになる。これで、データの安全を守りながら、ブラウザ内で早くてインタラクティブなサービスを作ることが可能となった.(p.204)」のである。

Webブラウザの普及とともに地図検索ツールGoogle Mapsの機能も豊富になっていく。当時(2004年末頃)のGoogle Mapsの機能は次のようにまとめられる:

グーグルマップは、3つの特徴的な機能を備えている。早くて滑らかなブラウザで表示される地図、空中写真と衛星写真の巨大なデータベース。そして最新の地理情報を包括的に検索できるグーグルの検索機能(p.241)。

発表当時は、米国だけのデータしかなかったが、世界の(地理)データの購入組み込みが進んでゆき、世界の地図検索サービスとして拡大展開される。因みに2005年7月には日本にもGoogle Mapsのサービスが開始され、米国についで2番目の公開国となる。

2007年1月にスティーブ・ジョブズによりiPhone上で動作するGoogle Mapsが公開される。Google Mapsは、iPhoneのキラーアプリとなる。

iPhone上でGoogle Mapsを動作させるうえで、その「マルチタッチ」と呼ばれる機能は決定的に重要だ。今では、スマホ上の動作として当然となった機能、「マルチタッチ」により「2本の指で画面を抑えて動かすことで、地図を拡大したり、縮小したりする」ことができる。

余談になるが、GoogleとAppleとの間の闘いも巻き起こる。Appleは独自の地図検索アプリを開発し、Google MapsをiOS6でiPhoneから締め出すという措置にでる。Google Mapsの地図検索機能としての優位性からGoogleの勝利に終わり、AppleのCEOティム・クックが謝罪した。

一方、Googleは、モバイル端末のOSとしてOpen SourceのOS、アンドロイドを発表。特許問題での係争と発展した。

とにもかくにも、「アイフォン版グーグルマップが世界を変えた(p.391)」のは間違いない事実だろう。

Google Mapsの新たな展開と自動運転部門のスピンアウト
更にGoogle Mapsの機能は拡大し続ける。なかでもGoogle Mapsで表示する地図データを自前で作成するプロジェクト(グランドトゥルース・プロジェクト)を開始したことが特筆される。このプロジェクトのなかで、Google Mapsの機能のひとつストリートビューの役割は大きい。

このストリートビュー機能は、次のようなものだ(以下、私の理解で本文を補足している):

これはストリートレベル(通行人目線)で街の様子を撮影し、
撮影したすべての画像を水平方向につなげ、必要なデータを抽出し(例えば住所など)、それらを検索可能にする。
ウェブサイトといったデジタル世界のなかだけでなく、物理世界をも検索可能にするという(p.369-370)。
そこには、(ラリー・ペイジの)長期的ビジョンが窺われる。

グランドトゥルース・プロジェクトの最初のステップとして地図作成ソフトウェア「アトラス」が開発される。「アトラス」の概要は次のようなものだ。

アトラスはグーグルの持つ特定地域に関するすべてのデータを一つの画面で見せることができる。
空中写真と衛星写真が最初のレイヤーになっており、その写真のうえに道路をなぞることで地図を描くことができるような仕組みになっている。
空中写真のうえには、何千ものドットが並んでおり、それぞれのドットにはストリートビューの画像収まっている。
そのうえに、政府が無料で公開している交通網のデータベースの地図が重ねられ表示されており、この交通網のデータは最初のレイヤーの空中写真と衛星写真を参照しながら正確なものに修正される。
ストリートビューの画像は、グーグルのコンピュータビジョンアルゴリズムが自動で処理され、道路標識や住所といった道路に付随する情報を抽出する。そして、速度表示からスクールゾーン、車線の数、左折や右折の制限まで道路情報を解釈することができる。例えば、道路のどちら側の車も同じ進行方向である画像であれば、その道が一方通行であると推測されるという具合にである。
これら交通網のデータは最終的にオペレータにより確認されてゆく(p.410-412)。

こうしてグランドトゥルースでは交通網を含む地図データが作成されていくのであるが、現在、これは「すべてのグーグルの地図プロダクトおよび自動運転事業で使う地図データの基盤となっている(p.418)」という。

グランドトゥルースのデータはグーグルの自動運転車開発プロジェクトをも支える。ストリートビューデータ、そして解析技術は自動運転車の開発の基盤となるものだ。「自動運転車のプロジェクトは現在、グーグルからスピンアウトした別会社ウェイモで継続している(p.419)」

「2014年までにグーグルの地図プロダクトのデータべs-スの総量は25ペタバイト(p.433)」という途方もない規模になっている。グランドトゥルース・プロジェクト、自動運転車の開発などを通じ、データが蓄積されているに違いない。ラリー・ペイジの「地図や地理データを中心に、あらゆる種類のデータを整理する」という野望は現実になってきたように感じたところだ。
  


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