福島第一・原発処理水の海洋放出についてちょっと考えてみた

August 27, 2023 – 12:02 pm

24日から福島第一原子力発電所に貯留されていた原発処理水の海洋放出が開始された。

この措置について、さまざまな議論がされている。多少、原子力の仕事に携わったことがあるものとして、私なりの感想を述べるのもいいのではないかとこの記事を書いた。

私の立ち位置は、今回の処理水放出はやむをえない措置であり、十分なモニタリングを行い、制御したかたち、海洋放出を行うべきものと考えるものだ。10年にもわたってタンクに貯められ、現在も増え続ける汚染水の処理をやらないわけにはいかない。タンクを置く敷地が少なくなり、「廃炉」処理を行うことに支障をきたすということもあるが、それ以上に、タンクのなかに大量の処理水を置くことは制御しない形で、事故的に、海に流れこむ危険性もあるではないかと考える。

貯留タンク中には、「核汚染水」をALPS(多核種除去設備)を用いて処理された処理水が貯留されている。2019年に公表されている「他核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会取りまとめ(案)」には、貯留されている処理水の現状について次のように述べている:

現在貯留しているALPS処理水の約8割には、現時点でトリチウム以外の放射性物質が環境中へ放出する際の基準(告示濃度限度比総和1以下)を超えて含まれている

とし、

ALPS処理水に含まれるトリチウム以外の放射性物質については、・・希釈を行う前に二次処理を行い、トリチウム以外の放射性物質について告示濃度限度比総和1をみたすことを今後の対応方針として決定

している。

ここで述べられているのは、トリチウム以外の放射性核種についてはALPSで処理可能なものであり、これを活用して「告示濃度限度比総和1を満たすまで処理をするとしている。トリチウムはALPSの処理の対象とならないということだ。

こうした処理を前提に、放出対象とする「処理水」がトリチウムを含むものと説明されている。

今回の海洋放出を問題とする議論をながめてみると、いろいろあるが、気になった反対論の二つについてみてみることにした:

ひとつは、「TBS報道特集」での鈴木達次郎長崎大学教授のコメントだ。鈴木教授は福島第一事故発生時まで、原子力委員会委員をつとめ、日本の原子力産業のある意味「旗頭」としての役割を果たしてきたひとだ。以下のようにコメントしている:

他の国がですね危険だ危険だというほうの説明には私は賛成しないのですが、中には放射性物質が入っていますので純粋のトリチウム水とは違うものとして扱わなきゃいけないと思っています。
だから、そういう意味ではですね、ほかの国の原発や他の国の施設からトリチウム水が大量に流れているからこれも大丈夫だという説明は私は間違っていると思います。
二次処理をすれば確かにきれいになっていくと思うので半年なり1年なりもうけて実際にALPSがきちんと動きます。でてきた処理水は明らかに基準値以下になるということを書類ではなく実際にやってみて、そのデータを公開していただくというプロセスがあって初めてじゃあ本格的に放出を始めましょうとなるのがえーあの筋だと思いますね

はい、ご説ごもっとも、としかいいようがない。上述した「小委員会とりまとめ(案)」にきちんと記述してあるではないか、何をいまさらという感想だ。

こんなひとが、日本の原子力政策の中心にいたとは驚きだ。ある意味、がっかりだ。

次に、政治家の発言だ。日本共産党の志位和夫委員長のtwitter上への発信だ。以下のようなもの:

全漁連会長コメント。
「本日、ALPS処理水の海洋放出が開始された。我々がALPS処理水の海洋放出に反対であることは いささかも変わりはない」
「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」という約束を破った首相の責任はあまりにも重い。
汚染水(アルプス処理水)の海洋放出に反対する。

なんのことはない。漁連の説得もきちんとしないで、「汚染水(アルプス処理水)」を海洋放出するのはけしからん。ということを言っているにすぎない。

すこしは、海洋放出が安全であるかないかということを議論したらどうかと思ってしまう。私たちは漁民のみなさんの側にたっていますと宣伝しているだけになっているとしか思えない。
 


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