素人的経済観測: 我が国は「再建取り崩し国」へのとば口にいる?
June 4, 2024 – 11:15 am昨日の日経朝刊(6/3付け)の一面トップに「円の警告 国富を考える(1)人材・防衛…そがれる国力 通貨急落、成長描き直せ」と題する解説記事がでていた。この記事、日本経済の現状をわかりやすく示しているように感じた。
右図は、この日経記事に掲載されていた1960年から現在までの、わが国の国際収支の変化を表したものだ。ここには、国際収支発展段階説に基づき、それぞれの時代が「経済の成熟度」のどの段階なのかが合わせて示されている。
この図で示されているとおり、80年後半から貿易収支と経常収支が乖離し始め、2010年以降になると、貿易収支の赤字が定着してしまうが、経常収支は黒字を維持している。今のとこ世界第一の債権国である我が国は、貿易ではなく海外での儲けで生き延びていることがわかる。よく言われてきたことであるが、「産業の空洞化」と言われる状況がこの図から読み取れる。
現在の日本の国際収支は、「成熟した債権国」としてラベルされている。過去に貿易で稼いだ富をベースに所得収支で稼ぐ国に変貌したということのようだ。これ自体は結構なことのように思えるのだが、国際収支発展段階説の次のフェーズには、最終段階である「債権取り崩し国」というのが迫ってくるというのだ。この最終段階では、経常収支が赤字になり、海外勢に国債購入などを依存する借金国に落ち込んでしまう。国の「発展段階」に沿ったこととはいいながら、こうした事態はなんとか避けなくていけない。
図を見ると、2010年あたりから急速に貿易収支の赤字が増えている。この時期、わが国が「東日本大地震」に見舞われたときに一致している。この大地震を境に、わが国の原子力発電所は停止され、産業のコメであるエネルギは国外に依存するようになってきた。貿易収支の赤字は、エネルギー源を、原油、天然ガスなどの輸入に頼ることにより生じたものだ。「再建取り崩し国」への転落をする前に、原発などの自前のエネルギー源を確保しなければならない。