カストロの引退と中国の環境汚染問題
February 25, 2008 – 6:53 pm長期にわたってキューバの指導者として活躍したカストロ議長が引退した。もちろん、カストロ議長といえば、チェ・ゲバラとともに、キューバ革命を成功に導いた指導者として有名である。しかし、私はカストロというといつも、これとは別なことを思い出す。もう20年以上くらい?になると思うが、彼が中国を訪問し、その帰途、日本に立ち寄ったときの、TVインタビューの内容がとても印象深い。このインタビューで、現代の中国の環境汚染問題を「予言」していたのだ。
私の記憶にあるTVインタビューで、カストロが中国の経済発展について興味深い意見を述べたとの記憶がある。「考えてもみなさい、あれだけの数の中国人民がみんな車を持つようなことになると、大気汚染で大変なことになってしまう。こういう事態はさけなくてはならない」といった意味のことを話したと思う。単に、中国内部の環境汚染問題について述べただけでなく、世界中の環境問題といったのかもしれない。私の記憶は定かではない。しかし、カストロがこうした意味の発言をしたというのをはっきりと記憶している。
このTVインタビューを見たとき、カストロというのは面白いことを言う人だなと思った。しかし、この「予言」めいた発言をそんなに重要なこととは感じていなかった。当時の中国は、まだ車の量も少なく、あの広い通りを自転車の大群が走り抜けていた。これが、我々が目にしていた中国の一般的な景色だったと思う。間違っても、カストロが心配するようなことは起きないだろうというのが、私の感想だった。単に、カストロのパーソナリティを示すエピソード程度のものだろうと思っていたのだ。
しかし、現在の中国、まさに、あの時のカストロの「予言」どおりの状況が生み出されているのではないか。今年、夏の北京オリンピックを控え、マスコミは北京の大気汚染の深刻さを報道している。大気汚染を避けるため、北京入りする前の調整は日本でする国が多くあるとの報道にも接する。
カストロの真意は、中国指導部が進めようとしていた「資本主義的」経済発展に対して牽制をしたということであって、中国の環境問題自身を心配したのではないのだろう。しかし、そうであっても、あのカリスマ指導者の先見性については驚くばかりである。