2025年までにフランス原発17基の閉鎖も – 仏新環境相

July 16, 2017 – 10:19 am

数日前のワールドニュース(NHK・BS)の France2で、Macron新政権の環境相 Nicolas Hulotによる「2025年までに最大で17基の原発を閉鎖することも有り得る」との発言を大きく報じていた。

フランスは電力の約75%を原子力に依存する原子力大国だ。フランス以外の国々にとっても、Macron新政権の原子力政策の行方は大きな影響を及ぼす。今回の仏環境相の発言、注目すべきニュースだ。

英語のネットニュースFRANCE24で、フランスの原子力をとりまく現状を交えながら、このニュースが詳しく報じられていた(http://www.france24.com/en/20170710-france-hulot-could-close-nuclear-plants)。主要部分を仮訳するなどして、このニュースについてメモしておいた。

France24のニュース冒頭部は以下:

(仮 訳)
フランス環境相、Nicoras Hulot、この月曜日、「2025年までに最大で17基の原発を閉鎖することもありうる」と発言

Hulotによると、この動きはフランスの原子力への依存度を50%に縮小するという再生エネルギ法を政策として具体化させるものという。現在、フランスでは、電力のほぼ75%が原子力によっている。多様化の推進は、HulotそしてEmanuel Macron大統領政府が採っている明確な姿勢・態度に続くものだ。この姿勢・態度には、2040年までにガソリン車そしてディーゼル車の販売を終えること、最近明らかにされたパリ協定署名2周年記念の気候変動会議の開催(12月12日開催)が含まれる。
「こうした目標を達成するためには、将来、何基かの原子炉、おそらく最大で17基の閉鎖を考えに入れなければならないということは当然だ。」フランスのラジオ局RTLでの、Hulotの発言だ。さらに、彼は、「全ての原子炉は固有の経済的、社会的、さらには安全性の文脈において考慮することになる」と発言した。

(原 文)
Nicolas Hulot, France’s environment minister, announced on Monday that France could close “up to 17 nuclear reactors” by 2025.
Hulot says the move aims to bring policy into line with a law on renewable energy that aims to reduce French reliance on nuclear power to 50 percent. France currently derives close to 75 percent of its electricity from nuclear power. The push for diversification comes on the heels of other high-profile stances taken by Hulot and the administration of President Emmanuel Macron, including a ban on new fossil fuel exploration an end to the sale of gas and diesel-powered vehicles by 2040, and a recently announced climate conference to be held on December 12 for the two-year anniversary of the signing of the Paris Accord.
“It’s understandable that in order to reach that target, we will have to close a number of reactors … it could be up to 17 reactors, we’ll have to see,” Hulot told French radio station RTL. “Every reactor comes with its own unique economic, social and even security context.”

フランスの原子力業界が抱える課題
冒頭部に続き、このニュースでは、フランスの原子力業界の抱える課題について詳しく議論されている。ここで議論されている課題は、我が国の原子力の行方を考えるうえで重要な視点を与えるように感じた。

以下、このニュースの冒頭部に続く部分を意訳しておいた。意訳といっているように、原文に忠実ではない部分も多い。正確な表現については原文を参照してほしい。

【エネルギーの自立】

  • こうした原子力の削減はフランスのエネルギー政策に大きな転機を及ぼす。
    フランスの原子力への多額の投資は1973年の石油危機に遡る。非エネルギー資源国フランスはエネルギーの自立を図った。
      
  • 1973年以降、フランスは国策で原子力発電所を建設計画を推し進めた。
    計画は中央集権的で野心的なものであり、原子炉の設計は、米国の加圧水型原子炉をベースとした単一のものに統一されていた。これにより、わずか7年間で、現在の58基の原子炉の76%の建設を完了させた。これに要した費用は現在の価値に換算して3,300億ドル(2,900億ユーロ)に達した。
     
  • この国策的な投資を通じ、フランスはエネルギーの自給自足を達成。
    電力の75%は原子力による。75%という比率は世界で最も大きい。
    原子力に関わる象徴的な二つの会社が創られた。原子炉を製造する企業Arevaと、原子炉を運転するElectoricite de France(EDF)だ。EDFは85%が国有であり、200,000人以上が雇用されている
     
  • 結果、1970年代から2014年にフランスの温室効果ガスは劇的に低減。
    フランスの一人当たりの平均CO2放出量は4.32トンであり、EUの平均6.22トン、そして米国の16.22トンを大きく下回る
     
  • 環境保護主義者は原子力がグリーンエネルギとするのに懐疑的。
    2011年のドイツの原子力停止後のCO2放出量の増加は、石炭火力に転換したが、わずかなものだった。
      
  • 【原子炉の老朽化】

  • フランスの原発は老朽化。建設時の想定寿命は40年。
    平均して原子炉は建設後30年を経過。フランスの58基の原子炉のうち15基は35年を超えている。
    最も古い原子炉は1977年に建設されたFessenheim。フランスとドイツの国境の地アルザスの近くにあり、フランスとドイツの間の論争の的になっている。2014年には冷却水の漏洩により発電所の原子炉のひとつが強制的にシャットダウンされたが、この事象に係り、ドイツのメディアはフランス政府がリスクを軽視していると非難。(因みにドイツは2011年の福島大事故後、原子炉の所有を断念。)

  • 前政権計画:Fessenheimは建設中原子炉稼働後閉鎖。原子炉寿命を10年間延長。
    前大統領フランソア・オランドの環境相、Segogene Royalは4月に、ノルマンディに建設中の新たな原子炉が稼働したら、できるだけ早くできるだけ早くFessenheimを閉鎖すると発表した。しかし、オランド政府はフランスの原子炉の寿命を10年間延長する旨、宣言。原子力発電所を維持、交換するのか、あるいは代替的なエネルギを選択し原子炉を徐々に縮小していくのか、どちらの道を選択しても。その費用は大きなものになる。
      
  • 再生可能エネルギー採用による原子力を段階的廃止には巨額の予算が必要。
    直近の大統領選挙キャンペーンの間、パリに本拠とする自由主義系のシンクタンクであるMontaigneがレポートをリリースしたが、この報告書の結論は、もし風力とか太陽光発電を選択し即時に原子力のフェーズアウトをするなら、送電網の高度化を含め、2035年までに2,170億ユーロの予算を必要とする。さらに、現存する原子炉は寿命到達時に解体する場合、発生する廃棄物の処理も含めておよそ850億ユーロの予算が見積もられる。
     
  • 新世代型の原子力プラントを推進するコストはさらに大きなものになる。
      

このニュースから、フランスの野心的なエネルギー政策を知ることができる。そのエネルギー政策のもと、原子力政策の大きな転換が図られるようだ。

6年まの福島の原発事故は、世界中に原子力の負の側面を気付かせる契機となったように思われる。原子力から風力、太陽光発電といった再生可能エネルギー利用に移行するには道のりは険しい。しかし、再生可能エネルギーの利用を中心に据えるエネルギー政策は当然の道と思う。

それにしても、福島の原発事故を経験した我が国では、未だに原子力からの脱却を目指さず、老朽化した原子炉の再稼働そして(20年もの)寿命の延長を行なおうとしている。なんとも情けない話ではないか。


Post a Comment