イタリア 原子力政策を転換?
May 24, 2008 – 11:36 amIHT(International Herald Tribune)のHP(5月22日付けの記事)にイタリアの原子力政策が転換されそうとの記事を見つけた。今年の1月には、やはりIHTの記事で英国の労働党政権が、新規の原子力発電所建設に前向きな政策を取るとの報道があったところだ(当ブログ「地球温暖化問題と英国原子力政策」に関連記事)。このイタリアの動き、チェルノヴイリ事故以来、原子力発電に反対の空気の強かったEU諸国が、徐々に、エネルギー源としての原子力に回帰するサインなのだろうか。
日経(5/23:夕刊)にも、このイタリアの政策転換の可能性が報道されていた。NikkeiNetに記載された記事では、
イタリアのスカヨーラ経済発展相は22日、「現政権中に原子力発電所の建設を始める」と述べ、1987年の国民投票で決めた原発凍結政策を転換する方針を表明した。ベルルスコーニ首相は4月の総選挙でも原発建設再開を公約の一つに掲げていた。原発の立地を巡っては反対も予想され、政府の方針転換は議論を呼びそうだ。
となっている。
1986年に発生したチェルノヴイリ事故以来、過去20年以上にわたり、ヨーロッパ諸国では原子力反対の流れが強かった。その流れを受けて、わが国でも原子力推進は時代錯誤との非難もあった。原子力への依存度が非常に高いフランスを除き、ヨーロッパ諸国の大部分では、イタリアを含め原子力の利用は禁止され、ドイツ、ベルギーでは、稼働中の原子力発電所については、その寿命の範囲内での運転を認めるものの新規の原子力発電所建設を行わないという政策をとっていた。
こうしたヨーロッパ諸国の原子力に対する状況は、原子力から「決別」した1980年代とは一変している。原油の高騰、地球温暖化問題、人間活動とりわけCO2排出が主要な原因とされたことなどだ。これに加え、ロシアからの天然ガス供給停止問題などエネルギーセキュリティからみて、大きな問題も、新たに生じた。イタリアは、ヨーロッパ諸国のなかで最大のエネルギー輸入国だ。その他のヨーロッパ諸国の大部分もエネルギー輸入国だ。太陽光発電などグリーンエネルギーを基幹エネルギーとするには、まだまだだ。その規模からいって不十分なものといわざるを得ない。
私は、以前のエントリーでも述べたように、原子力が地球温暖化問題解決の切り札と考えている。今回のイタリアの動きは、その意味で、当然の流れと思う。しかし、原子力にかかわる問題、その安全性、廃棄物問題など解決すべき課題は多い。計画から建設までの時間も10年以上かかることも原子力施設を建設における大きな問題だ。今回のイタリアの動きを含め、今後のヨーロッパ諸国の動きを注目していきたい。
参考: Italy signals turnaround on nuclear power
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