日本学術会議の「『ホメオパシー』についての会長談話」を読んでみて

August 28, 2010 – 9:26 pm

8月24日付けで表記の会長談話がだされた。読んでみた。最初に受けた印象は、日本学術会議が「ホメオパシー」などという荒唐無稽の治療法について言及するというのはいかがなものか、と思っていた。しかし、よくよく考えると、どうも相当に深刻な話のようだ。

新聞報道によれば、長妻厚生労働大臣は、この会長談話を受けて「厚労省で研究していく」と述べたという。どうも、このあたりに会長談話をださざるを得ないと判断された背景があったのではないか、と疑ったりした。危惧でおわればいいのであるが・・・。


「ホメオパシー」とは?: 会長談話によると、ホメオパシーとは次のようなもののようだ:

ホメオパシーはドイツ人医師(1755-1843年)が始めたもので、レメディー(治療薬)と呼ばれる「ある種の水」を含ませた砂糖玉があらゆる病気を治療できると称するものです。(中略)レメディとは、植物、動物組織、鉱物などを水で100倍希釈して振盪する作業を10数回から30回程度繰り返して作った水を、砂糖玉に染み込ませたものです。希釈操作を30回繰り返した場合、もともと存在した元の物質が含まれないことは誰もが理解できることです。「ただの水」ですから「副作用がない」ことはもちろんですが、治療効果もあるはずがありません。

この「ただの水」に何故治療効果が期待できるのか、数日前に読んだ池田了著「擬似科学入門」(この本に対する私の感想はここ)では次のように説明されている:

その理由は、水は毒物を含んでいたことを記憶しており、毒物に対抗する力が生まれて効き目があるという(岩波新書「擬似科学入門」(p.63)

なるほど、と思う。「記憶する」なんてフレーズがでてくると、現代医学で十分な効果を得られない末期のがん患者などは、上記の学術会議会長談話などを信じないでわらをもつかむ気持ちで信じたくなる。患者さんの気持ち、理解できなくはない。

私は現代医療に救われた: 実は、私、フェーズⅣの「がん患者」のひとりであった。幸い、私の場合、こうした荒唐無稽な治療法を信じることなく、現代医療を信頼し科学的な治療を受けた。そのおかげで「がんからの生還」を果たせたわけだ。発病から、何の問題もなく、すでに5年が経過している。

科学の進歩、現代医療に感謝だ。

発病した時点で、このホメオパシーに頼るようなことはなかったが、私にも「アガリスク」などなど、さまざまな代替医療を(善意で)薦められたという経験はある。私は、こうした代替医療より、現代の科学そして現代医学の進歩に優位性があると考え、そしてそれを信頼した。もちろん、治療開始時点で、治療方法について、可能なかぎりの資料を調べ、自分なりに納得し治療を受けたのは言うまでもない。

私が「がんから生還」できたのは、まさに科学そして現代医学の勝利だ。さらに言えば、科学そして現代医学をベースとする我が国の医療体制と健康保険の体制があったからこそ、その恩恵を受けることができたと思っている。

厚生労働省がホメオパシーの効果の検討を行う?: 日本学術会議の会長談話がでてまもなく、厚生労働省がホメオパシーを含む代替医療についての調査班を作るとの新聞報道が行われた。8月26日付けの日本経済新聞Web版に次のような記事がある:

厚生労働省は欧州などで広がり国内でも利用者が増えている「ホメオパシー」を含む代替医療について、国内外の利用実態調査に乗り出す。漢方や針きゅうも含め幅広く調べる。専門家による研究班を月内に発足、効果の科学的根拠などに関するデータも収集する。通常の医療に効果的に代替医療を組み合わせる方法も探る参考にする。
(中略)
厚労省は聖路加国際病院の福井次矢院長を主任研究者とする研究班を設置、来年3月まで調査する。研究費は1千2百万円。医療機関や家庭での代替医療の利用実態を把握し、研究論文などをもとに効果の有無に関する科学的根拠(エビデンス)を集める。

この記事、厚労省がいかにも中立の立場にたっているような印象を受ける。しかしである。厚労省が、「ホメオパシー」などという明らかに荒唐無稽な治療法の研究を、この時点で行おうとするのはいかがなものか。見識を疑う。厚労省自らが、現代の医学への不信をあおるような混乱を持ち込むことになってしまうのではないか。

全く理解できない厚生労働省の動きである。こうした無見識な姿勢の厚生労働省が、日本の厚生行政に責任をもてるとは思えない。間違っても、治療効果が皆無のホメオパシー治療に健康保険が適用されるなんて滅茶苦茶な話だけにはならないように願うだけだ。

このままだと危ない。

きっと、今回の日本学術会議会長談話の発表、こうした厚生労働省の見識の無さを知ってのことだったのだろう。単なる危惧におわればよいのであるが・・・


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