株式の配当所得、譲渡所得は確定申告すべき?

August 29, 2018 – 4:05 pm

数日前、私と妻宛てに夫々「平成30年度 介護保険料額決定通知書兼特別徴収通知書」が送られてきた。この通知書、平成30年度に年金から天引きされる介護保険料が決定した旨記載されている。

通知された介護保険料、私の理解していた保険料(所得段階)とは異なるものであった。いろいろ調べてみると、この相異は、確定申告における株式の配当所得、譲渡所得の枠組みについての私の理解不足によるものだった。

通知書の説明には、介護保険料(所得段階)の決定には、「合計所得金額」が用いられている旨記載されている。この「合計所得金額」なるもの、総合課税の枠組みで「所得税」を算定する際の「総所得金額」とは異なるものという。これを理解していなかったことが、私の想定していた介護保険料と通知されていたそれとが異なっていたということらしい。

ということで、上場株式の譲渡益、配当を確定申告すると「合計所得金額」と「総所得金額」がどうなり、介護保険料等の算定にどのような影響があるかについて、纏めておくことにした。今後、誰かの役にたつかもしれない。
注)以下の記載は筆者の個人的なメモ。正確さについては保証しないことご了承ください。

証券会社の口座は特定口座(源泉徴収あり)を利用している。上場株式の取引で譲渡益がでるとこれへの所得税と住民税は自動的に源泉徴収される。配当に対する所得税と住民税についても、同様に、源泉徴収される。株式取引きに関わる納税手続きは、基本的には、これで完結する。

ただ、証券会社を通じた上場株式等の譲渡、株式の配当について確定申告すると話は複雑になる。源泉徴収された所得税、住民税が還付されるなど税負担は軽減されるのであるが、代わりに所得額が増えることになり、「副作用」ともいえる影響がでる。

上場株式の譲渡で発生した損失は、確定申告することにより、翌年以降3年間にわたって繰り越すことができる。繰り越した損失は、翌年以降の株式等の譲渡益及び配当所得と確定申告により通算することで、源泉徴収された所得税、住民税が還付されることもある。過去の損失が大きいとこの繰越し通算の仕組みにより、源泉徴収された所得税、住民税を取り返すことができるのはありがたい。

しかし、だ。上述したように、確定申告したことによる「副作用」も発生する。源泉徴収という仕組みで「覆い隠されていた」所得が、「表面化」し、これにより、所得の過多による国民健康保険税、介護保険料などが増えるという「副作用」が発生することになる。

上場株式の譲渡益、配当所得を確定申告するときには、税が還付されることによる影響・「副作用」を十分に理解しトータルでの損得を考えねばならない。

損益通算する前の所得、後の所得
上述したように、「合計所得金額」と「総所得金額」は異なるのであるが、大雑把にいうと、損益通算する前の所得金額を用いた所得額が「合計所得金額」、損益通算をした後の所得額が「総所得金額」になる。

株式の譲渡益がある、さらには配当所得があるような場合、所得税の負担を低減するために3年間にわたって繰り越された損益を差し引いて「総所得金額」を算出し、これをもとに所得税を算定されることになるのだが、介護保険料の決定には損益を差し引くまえの「合計所得金額」が用いるため、確定申告することにより介護保険料が増えてしまうことになるのである。

確定申告することの影響を列挙してみる
確定申告することで影響されるのは介護保険料だけではない。以下、それぞれ影響をうけるものについて箇条書きしておいた;

  • 介護保険料(所得段階)
    上述したように損益通算する前の所得額(合計所得額)により介護保険料(所得段階)が決定される

  • 配偶者控除あるいは扶養控除の適用
    控除対象配偶者あるいは扶養控除親族の条件のなかに、「年間の合計所得金額が38万円以下であること」という条件がある。
    確定申告時に提出する「申告内容確認票B」のなかに、「配偶者の合計所得金額」(49)という項目がある。ここでは、配偶者が上場株式の譲渡益がある場合には損益通算する前の所得を用いねばならなく、ここに記載した金額により配偶者控除(24)が算出される。

  • 国民健康保険税の所得割分
    国民健康保険税の所得割の算出は、所得額から一定の控除額を差し引いた基準額に定率をかけることにより算出される。確定申告により所得額(損益通算したのちの「総所得金額」)が増えることにより国民健康保険税も増えることになる。

  • 70歳以上の医療費の自己負担割合
    同一世帯に70歳以上75歳未満の国民健康保険被保険者で住民税の課税標準額が145万円以上あるものがひとりでもいる場合、「現役並み所得者」と判定され70歳未満の被保険者と同じ3割負担となる。それ以外の被保険者は2割または1割負担となる。
    ここで、住民税の課税標準額は総所得金額から各種控除額を差し引いたものになる。各種控除額のうち配偶者控除、扶養控除の適用は上記したように合計所得金額を考慮する必要があるので注意が必要

  • 介護保険の利用者負担割合
    要介護認定を受けている第1号被保険者(65歳以上の被保険者)の負担割合は平成30年8月より以下

    被保険者本人の合計所得金額が220万円以上の場合

    • 3割負担
      年金収入+その他の合計所得金額の合計額が単身世帯で340万円以上、または2人以上世帯で463万円以上
    • 2割負担
      年金収入+その他の合計所得金額の合計額が単身世帯で340万円未満、または2人以上世帯で346万円以上 463万円未満
    • 1割負担
      年季収入+その他の合計所得金額の合計が単身世帯で280万円未満、または2人以上世帯で346円未満

    被保険者本人の合計所得金額が160万円以上 220万円未満の場合

    • 2割負担
      年金収入+その他の合計所得金額の合計額が単身世帯で280万円未満、または2人以上世帯で346万円以上 463万円未満
    • 1割負担
      年季収入+その他の合計所得金額の合計が単身世帯で280万円未満、または2人以上世帯で346円未満

    被保険者本人の合計所得金額が160万円未満の場合

    • 1割負担

まとめ
証券会社の特定口座で上場株式等の譲渡所得、配当所得などが源泉徴収されているとき、これを3年前に遡り損益通算するため確定申告すると、損益通算したのちの所得(総所得金額)とは異なる損益通算する前の所得金額(合計所得金額)を考慮しなければならない場面に出くわす。

確定申告することにより、源泉分離されていた所得税、住民税の還付を受けることができるが、介護保険料(所得段階)の決定などが合計所得金額を基礎にされるため確定申告することにより影響を注意深く見極める必要がある。
  


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