国民健保には一般国保と退職国保の2種類がある?

February 24, 2009 – 11:07 am

 数日前、役所から「退職保険証の送付について」という文書と、「新しい」(退職者用)国民健康保険証が送ってきた。私のように、65歳未満の年金受給者は、「退職者医療制度」というもののお世話になるようである。この仕組み、どこかで読んだことがあったが、保険料その他、通常の国民健康保険と違いがなかったので、そのままにしておいた。被保険者が手続きをしないと、(ご親切にも)役所が自動的に手続きをしてくれるようだ。

 

 役所からの文書: 役所から送ってきた「退職保険証の送付について」という文書は、次のようなものであった:

国民健康保険制度には、一般国保と退職国保があります。退職国保の対象者は、厚生年金や共済年金などの年金の加入期間が20年以上あり、老齢(退職)年金の受給権のある方です。

 

 国民健康保険法施行規則の一部改正(平成15年3月31日改正)により、既に一般国保である人が退職国保となる場合について、退職被保険者に該当することが公簿等で確認ができる場合は、退職保険証の発行ができることになりました。

 

 今回、社会保険庁から提供された年金受給権者情報に基づき、退職被保険者に該当されるという確認ができましたので、一般国保から退職国保へ切り替えをいたしました。

 

 なお、退職国保の医療機関窓口での自己負担割合は、一般国保と同じ3割です。国保税の算出方法も同じです。

役所から受け取った文書、実に不可解な部分がある。「自己負担割合」も「国保税」の算出方法も同じなのだが、条件にあてはまりますので、退職国保にいたしました、というものだ。これでは、何故、退職国保へ切り替える必要があるのか、さっぱりわからない。

 

もともと退職者医療制度とは?: 調べてみると、これは、我が国の健康保険制度の「改悪」を反映しているようだ。少し古い資料になるが、私の本棚に兒玉美穂著「はじめての年金・医療保険(集英社新書)」というのがあった。この本、出版が2001年2月21日で、当時の(今の一つ前の)健康保険制度について解説されている。このなかに、「退職者医療制度」というのがでてくる。

国民健康保険には、「退職者医療制度」というものがあります。これは定年退職したサラリーマン等が加入できる制度です。通常、サラリーマンが定年退職すると健康保険から国民健康保険に移ることになりますが、国民健康保険の一部負担金(医療機関等の窓口で支払うお金)の額は、かかった医療費の3割と健康保険の2割より割高です。これから年金生活を迎える人にとって、この負担は大きいでしょう。まして、この年代になると、病院へ行く機会も増える傾向にあります。そこでできたのが、この退職者医療制度というものです。窓口負担は従来どおり2割で、家族(被扶養者)の負担は、3割(家族の入院は2割)になります。70歳から老人保健が適用され、個人の負担は軽減されるのですが、退職者医療制度とは、それまでのつなぎだと考えればいいでしょう。(p.150-151)

なるほどと思う。そもそも退職者医療制度は、(定年)退職者の医療費負担を軽減するためにできた制度だったのだ。ところが、一般健保の一部負担金が国民健康保険と同じ3割に変わって以来、被保険者にとっては何のメリットもなくなってしまったということだったのだ。

 

現在の退職者医療制度はどのようなものだろうか? Webのなかでみられる(役所の)標準的な説明は次のようなものだ。

国民健康保険の加入者で、長い間会社や役所に勤め、退職して年金受給権のある64歳以下の方は、65歳の誕生月の月末までの間、退職者医療制度に該当します。

この制度を受けた方の医療費の一部は、各種保険組合などの拠出金によってまかなわれています。

平成20年4月の新しい高齢者医療制度の創設に伴い退職者医療制度は廃止されますが、経過措置として、平成26年度までの間における65歳未満の退職被保険者が65歳に達するまで存続することになっています。

ここで、ポイントは、「この制度を受けた方の医療費の一部は、各種保険組合などの拠出金によってまかなわれています。」という部分だ。この「退職者医療制度」にため、健康保険組合は拠出金を払っている。この拠出金についての説明では、

退職者医療制度は市区町村が実施することになっていますが、そのための財源は本人の医療費自己負担および保険料のほかは健康保険組合など被用者保険の拠出金でまかなうことになっています。具体的には、その組合の標準報酬総額に一定率を乗じて算出することになっています。これが退職者給付拠出金です。

となっている。まとめると、現行の「退職者医療制度」は、被保険者にとっては何のメリットもなくなった制度ではあるが、保険制度の改正前と同じように、健康保険組合からの拠出金だけはいただいています。「国民健康保険の財源確保のために当面この制度は維持させていただきます。」ということのようだ。

 

随分前になるが、このブログに「国民健康保険の税額はどうやって算出される?」という記事を書いたことがある。ここで、国民健康保険税は、「単位とする地方自治体住民全体の医療費のうち個人負担分を除いたものは、地方自治体と国が一部を負担し、残りを一定の規則にもとづいて住民に課す」といったものだった。これに加えて、「退職者医療制度」の対象者分については、健康保険組合からの拠出金で、当面、賄いますということのようだ。

 

いずれにしろ、我が国の健康保険制度つぎはぎだらけでわけわからなくなっているということだと理解した。

 



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