中西準子著 「原発事故と放射線のリスク学」を読んでみた

April 6, 2014 – 1:19 pm

ちょうど福島第一原発事故から3年たった。それに合わせるように本書が出版された。著者は環境リスク学で有名な中西準子。早速購入し、読んでみた。

中西準子の著作を手にするのは、私にとっては、初めてだ。不思議なことに、いつも利用させてもらっている近所の公立の図書館には彼女の著作が一冊も納められていない。そういうこともあり、これまで環境リスクの第一人者といわれる中西準子について断片的な知識しか持ち合わせていなかった。この機会に、彼女の環境リスク研究について、そしてそれをベースにして放射線リスクがどのように扱かわれるのかを知ろうということで、自ら購入し、読んでみることにした。

本書の第一印象は、環境リスクを分析・評価するというのはこういうことだったのかと再確認させてもらったような気がした、ということだろう。本書には、福島第一事故で環境中に事故放出された放射性物質のリスクを評価するうえで、評価の基盤となる「評価フレーム」が明快に議論、提案されているように思う。本書のタイトルが「リスク学」となっている理由もそのあたりにあるのだろう。

意外なことに、著者が放射線の健康影響を扱ったのは、福島第一事故による今回の研究が初めてのようだ。原子力、放射線との付き合いが長い私にとっては、環境リスクといえば環境放射線を避けて通ることはできないものと考えてきた。ある種の驚きだ。逆に、放射線の健康リスクについて、その基礎から積み重ねるように見つめなおす著者の取り組みは、私にとって、非常に新鮮で参考になる。

本書に示された「リスク評価」の枠組みは、私自身が、今後、放射線リスクについての考えかたを眺めなおすうえで有意義な基盤を提供されているような感じを受けている。本ブログ上で、ひとつひとつの関連する課題について自らの考えを見直す作業をしてみたいと思っているところだ。

本書の位置づけ
: 本書の内容の詳細に踏み込むのは今後に残す(本ブログ上で継続して議論する)ことにして、本エントリーでは、「まえがき」に記述されている本書の構成・内容についてメモすることにとどめる。

以下、抜粋:

 この本は、まず、放射線の問題をリスク評価という考え方で解き明かしたものです。つまり、低い被ばく線量の場合、どのくらいのリスクがあるのかを考え、それに対しては、どういう対策をとるべきかを考えるための本だということです。
 その上に、二つの特徴があります。一つは、かなり大勢の、私とは異なる専門分野の専門家のインタビューがあることです。私自身に、分からないことが多かったので、他分野の専門家に聞いて歩き、なかでも良いご意見だと思った方に登場していただきました。もう一つの特徴は、リスク評価などの結果から、除染に関する目標値(シーベルト)を提案したことです。私は、「さらなる検討が望まれる」というような結論の文章が嫌いです。調べたからには、具体的な提案を出さねばおかしい、そういう態度で研究してきました。それを、ぜひ読んでいただきたいです。
 第1章では、放射線のリスクを考えるための基礎知識をまとめてあります。 ・・・
 第2章は、大きく二つの内容に分れます。前半は、事故による放射線被ばく線量の実態についての総説的な内容であり、後者は除染事業、特に国直結地域除染事業についての現状と問題点、さらに提案です。 ・・・
 第3章は、経済学者で明治大学准教授飯田泰之さんとの対談です。除染か移住かを巡って、除染の費用はいくらまで認められるかなどの意見を聞きました。 ・・・
 第4章は、長らくやってきて科学物質のリスク評価との比較です。 ・・・
 第5章は、・・上野千鶴子さんがホスト(ホステス?)役だった対談「リスクを選んでいきる」です。
  
 原発事故による影響に関する本は、相当数出版されています。しかし、類書はないです。この本を通じて、これまでタブーとされていた世界に足を踏み入れてみてください。リスクという尺度が入ってくると、混とんとしていたものが筋道だってみえてくれるはずです。(「まえがき」より)

引用抜粋した上述の部分の最後、「類書はない」、そして「タブーとされていた世界」との記述、それはないんじゃないか?と思うのであるが、著者がどのように考えてこういう表現をしたのか、それも含めて、今後、詳しく眺めて行くことにしたい。