Archive for the ‘科学・技術・原子力問題’ Category



原発の運転期間を延長??

Wednesday, August 24th, 2022

日経電子版(8/24 5:42更新)に「岸田首相、原発運転期間の延長検討へ 追加再稼働も推進」と題する記事があった。

記事のリード文は以下(転載):

田文雄首相は24日に首相官邸で開くGX実行会議で、原子力発電所の運転期間延長の検討を指示する調整に入った。原発は最長60年の運転を終えれば、廃炉にすることが法令で定められている。安全審査にかかった時間を運転期間から除外して計算するなど実質的に延ばす方策を探る。

これには驚いた。

原発の寿命は40年というところだったのを、無理やり(1回限りの延長という条件で)60年に延ばしたばかりのはずだ。我が家から2.5キロの位置している東海第2原子力発電所は、起動時から40年超えるが、この延長によって再稼働をすることになった。

そもそも原発の寿命40年というのには特段の「科学的」根拠はなく、原発導入時に米国の火力発電所の寿命を参考に、決めたというように記憶している。「科学的」根拠もたいしてない40年を60年にしただけだから、大した話ではないだろという程度の話だった。一応、延長は20年を上限に1回限りという制限はつけられていた。

上述の記事では、「無理やり」延長して60年にしたところを、更に延長しようという話のようだ。根拠はひとつ、(安全審査で)運転しない期間を寿命のなかにとりこまなければ延ばせるだろうということのようだ。これでは、原子炉の寿命、青天井で延長してしまおうということになってしまう。乱暴な話だ。

上述の日経記事のなかで、GX実行会議という聞きなれない会議名がでていた。この会議の開催案内に次のように会議の趣旨が説明されていた。

産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革、すなわち、GX(グリーントランスフォーメーション)を実行するべく、必要な施策を検討するため、GX実行会議(以下「会議」という。)を開催する。

なるほど、グリーンといえば泣く子も黙る、ということか!!
  



小型モジュール炉(SMR)の導入に世界が動き出した!!

Tuesday, August 23rd, 2022

今朝の日経(8/23付け朝刊)に小型モジュール炉導入の世界的な動きについて、解説記事がでていた。

「〈テックビジュアル 解体新書〉小型原発、エネ安保で脚光米ニュースケールなど市場開拓、脱炭素へ欧米導入の動き」とタイトルされたもの。この記事のなかに、SMRの導入動向が世界地図上に示されていたのでメモしておいた。


                    (日経8/23付け朝刊より転載)

解説記事のリード文を以下に転載:

安全性や建設費の安さを特徴とする小型モジュール炉(SMR)の導入に世界が動き出した。大規模発電所を主体とした電力供給のあり方を変える可能性を秘め、米新興ニュースケール・パワーなどが新市場開拓に挑む。米欧と対立する中国やロシアはいち早く実用化を進める。気候変動やウクライナ危機で複雑さを増すエネルギー問題を解く有力技術として開発競争が熱を帯びてきた。

10年前の福島第一原発事故を経験した我が国においては、原子炉のコンセプトが異なり、いくら安全な原子炉といわれても、この技術に簡単には飛びつくことはできない。

しかし、ロシアのウクライナ進攻以降にLPGガスの高騰、脱炭素の流れのなかで、原発を導入することで最近のエネルギー危機に対応しようとするのは、自然の流れともいえる。背に腹は代えられないといったところかもしれない。

この解説記事によれば、「SMRは次世代の小型原子炉で、電源に頼らずに原子炉を冷やす構造などを採用し、安全性を高める。工場で大半の設備をつくり、短い工期で建設費を抑える。ニュースケールのこれまでの試算によると、米国内にSMRの発電所を設ける費用は1キロワットあたり3000ドル以下と、5000ドル以上の大型炉に比べほぼ半額の水準になるという。」(同上日経記事)

安全性だけでなく、スケールメリットを旨とする従来型の原子炉に変えて、SMRを詳細に検討するのはよいのかもしれない。

少し、きちんと考えてもいいのかな、と思った次第。



欧州: 気候変動対策よりエネルギー対策優先 石炭火力も復活

Friday, August 12th, 2022

「西欧から米国、中国にわたる北半球の広い地域が猛烈な熱波に襲われ、異常気象に対する警告は一般論ではなく、まさに現実の話」(Financial Times 7/26付社説)とCO2対策など異常気象への対処が強調されている。このところ毎日のようにヨーロッパ諸国の山火事、干ばつのニュースがヘッドラインを飾っており、異常気象に対する対処が急がれるといったところだ。

ところが、だ。

今日の日経朝刊には一味異なる話がでていた。「欧州、電力消費に規制・対策 スペイン冷房27度以上に、フランスは石炭発電復活」というニュースだ。このニュースのリード文を以下に転載:

欧州各国がロシアによる天然ガス供給減少への対応を急いでいる。節電のためエアコンの温度制限を設け、屋外照明なども規制する。フランスが石炭火力発電所の再稼働を決めるなど、気候変動対策よりも電力確保を優先する動きも顕著だ。インフレにあえぐ有権者がさらに不便を強いられ、各国政権への不満が高まる恐れもある。

歴史的な熱波騒ぎのなか、気候変動対策というより石炭火力、原子力発電を復活させたり、節電の動きを強化するなど、目先のエネルギー対策に重点を移すような動きがあるようだ。

なんだかんだいうけど、ロシアが天然ガスのヨーロッパ向けラインが閉じるなか、気候変動対策など先送りするのは当然、背に腹は「代えられない」というところか。

あれだけ評判の悪かった石炭火力発電についてみると、フランスでは3月に停止した東部サンタボルドの石炭火力発電所を今年の冬に再稼働、ドイツ、オーストリア、オランダも石炭火力発電の再活用を決めたという。

石炭火力の復活ということになると、当然のことながら原子力発電の復活という動きも大きくなるだろう。

さて、わが国はどうしたらいいのか、多分、石炭火力の強化、原子力発電の復活などを考えたほがよさそうだ。
  



福島第一処理水問題にやっと動きが!!

Thursday, August 4th, 2022

今日の日経朝刊(8/3付)に「処理水放出、来夏に延期も -東電、きょう設備着工 廃炉を綱渡り-」という記事がでていた。

記事リード文は以下:

東京電力ホールディングスは3日、福島第1原子力発電所の処理水を放出する設備の工事を4日に始める計画を発表した。まず海底トンネルの掘削やタンクをつなぐ配管設置などの作業に入る。廃炉作業に欠かせない処理水の放出に向けて一歩前進した。一方、工事の完了は当初想定した2023年4月中旬から、同年夏ごろまでずれ込む可能性も明らかにした。

それにしても、いろんな意見が飛び交っているのがこの処理水問題。「汚染水」の放出となると大変だけど、セシウムとかストロンチウムとかを除去した主にトリチウムからなる「処理水」なら海洋放出するのが最も適切な方策だ。

こんなことを決心するために何年も右往左往しながらタンクを増やし続けてきたというのにはあきれる。ただ、本当にきちんと処理された「処理水」かどうかは気になるけどね。

むしろ、海洋放出しないで、このまま敷地内にため続けるというのは海洋放出以上に「安全ではない」だろう。そろそろ潮時といったとこだろう。

海洋放出が安全か非安全かということではなく、処理水放出に伴い心配される「風評被害」ということらしいのだが、「風評」というのは安全性という観点では問題ないのに「危ないかも」という気分を流布するグループがいるということなのだろう。

海洋放出以外の方策を考えるべしという主張があるようだけど、トリチウムを除去する技術というのがどんなに大変なことなのか、少しでも考えてみればわかるはずだ。

とにもかくにも、スタートしたことはいいことだ。ぶれないで海洋放出の路線を堅持してほしい。
 



日本、気候行動ネットワークの化石賞に選出される!

Thursday, November 4th, 2021

グラスゴーのCOP26での岸田首相の演説に対し、世界の環境団体で作る気候行動ネットワークが日本を「化石賞」に選出した。

このニュース、今朝のTBSラジオ森本毅郎スタンバイでつぎのように報じていた(以下、書き取り):

世界の環境団体で作る気候行動ネットワークは2日、地球温暖化対策に後ろ向きな国に送る化石賞に日本を選んだと発表しました。岸田総理が地球温暖化対策を話し合う国際会議COP26で二酸化炭素の排出が多い石炭火力発電の廃止の道筋を示さなかったことを理由にあげました。

気候行動ネットワークのHPにこの化石賞について以下の記述があった。本文と私の拙訳を並べて以下に記しておいた:

Second Fossil of the Day Award goes to Japan

今日の2番目の化石賞は日本に

Japanese Prime Minister Fumio Kishida told the assembled Glasgow crowd that Japan promotes fossil power plants because they are necessary to integrate renewable energy, not only in Japan, but also throughout Asia.

岸田文雄首相はグラスゴーの会議で日本は化石燃料による発電を推し進めると発言。日本とアジア諸国にとって再生エネルギーを開発するために必要とした。

Despite a coal phase out being set as a priority goal for this COP, the land of the rising sun aims to continue using coal power plants beyond 2030 and even towards 2050. Furthermore, Kishida has had deluded dreams of using ammonia and hydrogen as “zero-emission thermal power”. He needs to wake up and understand that these novice and costly technologies are linked to fossil fuel extraction and would leave little chance of meeting the global 1.5C degrees targets. We need real world commitments to halt rising temperatures and a coal phase out by 2030 and not fossil fuel nightmares.

今回のCOPの主要なゴールが石炭の利用を廃止するものであるにもかかわらず、「日出る国」は石炭火力発電を2030年以降どころか2050年にわたってさえ使い続けようとしている。さらに、岸田首相はアンモニアと水素の使用でゼロエミッションの発電を実現しようとするというまやかしの夢を述べた。こうした未成熟でコスト高の技術が化石燃料の採掘に関連づけられるものであり、全地球的な1.5℃の目標になんら合致するものでないことに、彼は気付く必要がある。気温上昇を止め、2030年までに石炭の利用を停止し、化石燃料の悪夢を避ける世界的な現実的公約を必要とする。

岸田首相、大急ぎでグラスゴーにでかけたのだが、環境団体に言いたい放題の悪口を言われたようだ。

この「化石賞」なるもの、環境団体の意に沿わないものに悪口をいうもので、毎日、何か国も選出されている。別に、日本のマスコミのようにいちいち大騒ぎする必要はないのではと思う。

因みに、第二日の「化石賞」は、一番目はNorwayに、二番目が我が日本に、三番目には、Australiaに送られている。