国の制度変更による不利益は誰が負うべきか
April 18, 2008 – 4:27 pm2ヶ月ほど前に、「06,07年度退職者に住民税が還付される」と題する記事を書いた。一昨年の「地方分権の推進と三位一体改革」による国から地方への税源委譲に関わり、07年の所得が大幅に減った退職者に住民税増額分が還付されそうだという話題についてだ。しかし、総務省のパンフレットを詳しく読んでみると、相当、いい加減な措置のようだ。
このパンフレットでは、「・・税源の移し替えなので、『所得税+住民税』の税負担は基本的には変わりません。」となっている。しかし、税負担が変化しないためには、所得に大幅な変化がないことが前提だ。06,07年に退職したものにとっては、07年の所得は、前年06年に比べ、一般に大きく減る。『所得税+住民税』の税負担が増えることになることから、申告すれば、払い過ぎた住民税を還付されるということと理解していた。この措置、06,07年度に退職したものにとっては、有難い措置だ。
しかし、よく読んでみると、住民税が還付される対象者は、「平成19年(07年)に所得が減って所得税が課せられなくなった方」となっている。07年に所得が大幅に減ったとしても、所得税が課せられるだけの所得がある場合には、所得税の減額措置の恩恵を受けているので住民税は還付されないということのようだ。極端に言うと、1円でも所得税を払ったら、所得税の減額措置の恩恵を受けたことになり、取りすぎた住民税は還付されないということになる。
07年は団塊世代の第一陣が退職した年だ。2007年問題とマスコミを賑わしたのは記憶に新しい。かなりの数の退職者がいたはずだ。これら退職者の大部分が、「三位一体改革」なる国の制度変更に伴い、住民税を多めに払わされたということになる。国全体でみると、相当の額になるに違いない。結局、この制度の変更によるしわ寄せは、所得が減少した人たちに行くということではないのだろうか。変な話だ。
どうして、こんな理不尽なことがまかり通るのだろう?この4月1日から始まった後期高齢者医療制度の不備が問題になっている。この制度、「軽減措置をやっているのでご心配なく」と、増添厚生労働大臣は言うが、誰も信じてはいない。制度の変更で、国民の負担が大きくなる、というのが、国民の共通認識になっているのが現実だ。ここでも、制度の変更で、最も弱い人にしわ寄せが行く。
国の制度は、時代とともに変わるのは当然だ。しかし、制度の変更に伴い、不利益を蒙る人たちは当然のことながら出る。細やかに、不利益を蒙る人たちに対して、手当てして行くことこそ、本当に良い政治なのではないのだろうか?「基本的には」とか「全体として」とかのセリフはうんざりだ。ひとりひとりの国民の目線にたった細やかな対応こそ、今、政治に求められていることではないのだろうか。
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