「子供たちの理数力は高い」って本当?

January 19, 2009 – 7:07 pm

1月17日の日経(夕刊)の「明日への話題」に、有馬朗人の「子供たちの理数力は高い」と題したコラムをみつけ読んでみた。高校生の子供を持つ親のひとりとして、私の実感とかなりかけ離れた見解だ。有馬朗人といえば、高名な物理学者、東大総長、そして文部大臣・科学技術庁長官を歴任した人物。日本の文部行政、そして科学技術行政に責任を持つべき立場の人だ。こうした人が、「子供たちの理数力」が高いと発言したのを見ると、いままでの「理数力」低下の議論は何だったのか?びっくりしてしまう。

日経コラムの内容: コラムの内容、そんなに長いものではないので、以下、全文を掲げる:

 昨年は暗い話題が多かったが、科学や技術、そして教育については、明るい話に恵まれた。

 まず三人のノーベル物理学賞、一人の化学賞受賞である。また世界で最も注目された研究に山中伸弥京大教授のiPS細胞、細野秀雄東工大教授の高温超伝導の研究が入ったことである。

 そして「国際数学・理科教育動向調査」の2007年調査の結果、日本の小中学生の算数/数学と理科の学力の高さが確認されたことも喜ばしい。小学4年生の算数も理科も三十六カ国・地域中4位、中学二年生の数学は四十八カ国・地域中五位(四位の香港と有意差なし)、理科は三位(二位の台湾と有為差なし)であった。四、五十カ国近くの中で五位に入っているのである。素晴らしいことであると、もっと子供たちを褒めるべきである。

 この調査は以前から行われており、日本の小中学生の成績は常に高かった。中学生の理科力は、第一回(1970年)十八カ国中一位、二回(83年)二十六カ国中二位、三回(95年)四十一カ国中四位、四回(2003年)四十五カ国中六位で、数学力も似たようなものである。

 この順のみを見て一、二位が六位となったのは学力低下の証拠だと騒ぐ人が多いが、参加国の増加に注目してほしい。増加すれば多少の下降があっても、ちっとも不思議ではない。逆に今回三位に上がったからと浮かれてもいけない。このように日本の小中学製の算数/数学力、理科力は国際的に極めて高い。そして長期的に見て学力は低下していないのである。

敢えて全文を掲載したのには理由がある(本来、やってはいけないことだと思う)。 随分、乱暴な議論がされていると思ったからだ。多少、これを乱暴に要約すると、「(PISA報告などで)日本の子供たちの理数力が下がったと騒がれているが、問題ない。国際的な調査で順位が落ちたのは、調査の対象国・地域の数が増えたことが主たる要因なのだ。昨年の『国際数学・理科教育動向調査』では順位があがったではないか、喜ばしいことだ」となる。もっと、緻密な議論がされるべきなのではないだろうか。

私自身、「理科離れ」問題について、さらに掘り下げて考えたいと思っているところだ。ひとつの資料として、我が国の文部・科学技術行政に大きな責任を持ってきた識者の見解をメモしておいた。


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  2. May 16, 2009: 大学の教育内容って’91年以降、相当、変わってるんだ | Yama's Memorandum

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