大学の教育内容って’91年以降、相当、変わってるんだ

May 16, 2009 – 11:12 am

以前 「『子供たちの理数力は高い』って本当?」を書いた。このエントリー、日経コラム「明日への話題」に寄稿された有馬朗人のコラムの内容に批判的な印象を書いたものだ。同じ日経コラムに、4月のはじめ、大学の一般教養が弱体化してしまっていることを危惧し、同氏が2度にわたってコラムを書いている。これを読んで、私が学んだ40年前の大学の様子がすっかり変わってしまっていることに驚いた。こちらは、かなり大切なことが議論されている。

日経のふたつのコラム: 私が目にしたのは、「一般教養を再建せよ」(日経・4月4日夕刊)と「なぜ数学が弱くなったのか」(日経・4月11日夕刊)のふたつのコラムだ。

「一般教養を再建せよ」では、

・・・91年に大学教育大綱化が行われ、大学1,2年生に行わねばならなかった36単位の一般教育は自由化され、どうやってもよくなった。・・・・大綱化が決まるや否や、教養部は解体されてしまった。・・・この時代こそ、大学生にまず学問の面白さや学び方、基礎的一般教養をきちんと教えた上で専門教育をすべきである。

と主張されている。「この時代こそ」とは、「高等学校の教育の多様化、そして(大学への50%に達する)進学率急伸」という状況をさしている。

「なぜ数学が弱くなったのか」では、大綱化による一般教養課程の弱体化と教養部の解体について、異なった側面から議論されている。昨今のわが国の数学研究の国際的位置の低下の一要因を、次のように教養部の解体にもとめている;

・・・・教養部は文学部、理学部と共に、外国語、人文、社会、数学、自然科学など基礎分野の教育と研究を行う場であった。教養部がなくなると、それだけ基礎学問が弱くなると私は心配した。・・・・(JSTの科学技術力の国際比較のデータでは、日本の数学の論文数、被引用数が低下している。)あの輝ける日本の数学はどうしたのであろうか。
 大学等や研究所の正規ポストにいる数学者の数は99年3589人、07年3264人と10%減である。教養学部解体が主な原因のひとつではないであろうか。私の恐れは杞憂ではなかった。

大綱化による一般教養課程の弱体化は、大学生の教育の側面のみだけでなく、わが国の基礎学問の「競争力」低下をもたらしていると主張しているのだ。

91年の大学教育大綱化が、大学の一般教育にもたらした負の効果は、大変なもののようだ。では、この大学教育大綱化とは一体何だろう?文部科学省のHPを覗いてみると、説明があった(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigaku/04052801/001.htm);

平成3年までは大学設置基準において、大学の開設する授業科目を「一般教育科目」、「専門教育科目」、「外国語科目」、「保健体育科目」に区分すべきこと、また、それぞれの科目について卒業までに習得すべき単位数などを定めていたところを、個々の大学が社会の要請に適切に対応しつつ、より一層特色ある教育研究を展開することができるようにするため、これらの開設授業科目の区分や必修単位数などに関する規定を撤廃し、代わりに上記の2点を規定するのみに留めました。これが一般に「設置基準の大綱化」といわれているものです。

このなかで、「上記の2点を規定するのみに留め」に対応するのは、大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)の以下の条文が対応するようだ;

第2条の2 大学は、学部、学科又は課程ごとに、人材の要請に関する目的そのほかの教育研究上の目的を学則等に定め、公表するものとする。
第19条   大学は、当該大学、学部および学科又は課程当の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする。

この文部科学省(大綱化時点では文部省)の説明をみると、ポイントは、「個々の大学が社会の要請に適切に対応」し、「特色ある教育研究を展開する」ために、それまで定めていた「授業科目の区分」「単位数」などを撤廃したというのだ。

「授業科目の区分」の撤廃により「一般教育科目」に相当する授業科目をやろうとやるまいと、各々の大学が定めればよろしい。ただ、大学設置基準の第2条の2、そして第19条に基づき、大学は「理念」(といっていいのかな)を明確にし、公表し、それに基づいて「体系的に教育課程を編成」しなければならないということのようだ。

なるほど、知らないうちに、わが国の「大学」の姿が変わってきている。うかつだった。我が娘、1年半もたつと大学受験だ。個々の大学がどのような教育を行っているのか、詳細に調べないと、とんでもないことになってしまう。

私が、40年前にお世話になった大学の姿とは異なるものだ、ということを肝に銘じて調査しなければならないな。


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