第7次エネルギー基本計画に向けた鈴木達次郎の批判はフェア?

February 28, 2025 – 6:38 pm

経済産業省のHPに2月18日付けで「第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました」とアナウンスされている。

この基本計画は、識者から、いろいろ批判があるようだ。その批判のひとつに、日経朝刊(2/19付け)の経済教室で、鈴木達次郎・長崎大学教授により、「原子力発電の将来像(下) 依存度提言へ制度転換図れ」とタイトルされた「解説記事」がある。

この解説記事の前段を以下に転載:

政府は新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。東京電力福島第1原子力発電所の事故以降、計画には「原子力発電への依存度を可能な限り低減させる」と明記されてきた。しかし今回はその文言が消え、さらに従来なかった「建て替え(リプレース)」も含め「原子力も最大限活用する」との方針が明記された。

これは原子力政策の大きな転換と考えられる。この政策に合理的な根拠はあるのか。本来、日本はどのような政策課題に優先順位を置くべきなのか。これらの点について検証してみる。

政府が原発の最大限活用に転じる根拠として、経済性・供給安定性・温暖化ガス削減の必要性という3点が大きく挙げられている。しかし、どれをとっても最大限活用すべきエネルギー源としての根拠は弱い。

ここに述べられているように、かって原子力委員会委員長代理を務め、わが国の原子力政策の中心的な役割にいた鈴木達二郎氏本は、いまや原子力を最大限活用すべきエネルギー源としは相応しくないとしている。

一読して、この解説記事で主張されていること、その論拠について、いろいろ疑問はあるが、特に供給安定性について論じている部分については、大きく疑問を感じた。ここでは、この部分に注目して、私の疑問を記しておいた。

この解説記事に、次のような記述がある:

供給安定性に関しては、一定出力で安定した発電容量を確保できる点が原子力の特長であった。しかし頻発する地震による停止や、停止後の再稼働に不確実性が増すなど、計画通りの発電容量を確保できないリスクが顕在化してきた。日本原子力産業協会が発表している年間平均設備利用率は24年時点で30.6%にとどまり、供給安定性についても疑問符がつく。

ここでいう設備利用率とは何か。日本原子力産業協会によると、次のように定義されている:

              発電電力量
  設備利用率 = ーーーーーーーーーーーーーー ✖ 100(%)
            認可出力 × 暦時間数

原子力産業新聞の2025年1月の記事に、確かに「国内原子力発電2024年の設備利用率は30.6%」という記事がある。この記事には、以下のように記述されている:

原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2024年(暦年)の国内原子力発電所の平均設備利用率は30.6%、総発電電力量は888億7,031万kWhで、それぞれ対前年比2.6ポイント増、同9.6%増となった。いずれも新規制基準が施行された2015年度以降で最高の水準。

となっている。分子の発電電力量は、888億7,031万kWhとされている。一方、分母にあたる我が国の原発の認可出力は、原子力産業協会の「日本原子力発電所の運転実績」に合計で3,308.3万kwであることが示されている。この認可出力の合計は、再稼働されていない原発も含めて我が国のすべての原子力発電所の認可出力の合計である。

鈴木氏の記述している「30.6%にとどまる」というのは、再稼働している原発が少ないことによるもので、「頻発する地震による停止や、停止後の再稼働に不確実さがますなど、計画通りの発電容量を確保できないリスクが顕在化している」ことによるものではない。

解説記事の記述では、再稼働している原発の設備利用率が30.6%にとどまると読んでしまう。

意図したものかどうかは分からないが、読者をミスリードしてしまう「とんでも」解説記事だ。使用できないな。
 


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