「もんじゅ」プロジェクト、今や虚構?

November 10, 2015 – 11:27 am

原子力規制委員会は11月4日の定例会合で、日本原子力研究開発機構は高速増殖炉「もんじゅ」の運営主体として不適格である旨、これを所管する文部科学相に勧告することを決定した(日経(2015/11/5付朝刊)など)。マスコミでは、原子力規制委員会が「伝家の宝刀」を抜いた、との表現で、歴史的な決断がされたと報じている。

この決定に先立ち、11月2日には、規制委員会は臨時会議が開かれており、ここで日本原子力機構児玉敏雄理事長等との意見交換を行っている。この臨時会議の様子はYouTubeに公開されている(第38回原子力規制委員会臨時会議(平成27年11月02日))。

この会議のなかで、当然のことながら「もんじゅ」の機器点検もれなど保守運営上の安全問題について意見交換が行われ、その結果を踏まえて、冒頭に述べた文科省への勧告が決定されたのだが、保守運営上の問題にとどまらず「もんじゅ」プロジェクトそのものの抱える課題についても意見交換が行われている。

YouTubeで配信されている議論を視聴した結果、「もんじゅ」プロジェクトは、「今や虚構」ともいえる事態に陥っており、「ゴールのないプロジェクトをいたずらに継続しようとしている」との感想を得るにいたった。

私が、YouTube上で配信されている議論のなかで、特に注目したのは、田中知・規制委員会委員が「もんじゅ」の燃料問題について指摘しているくだりである。ここで行われている議論を素直に聞くと、「もんじゅ」プロジェク自体が、もはや復帰不可能な状態になり破たんしてしまっているとしか思えないのだ。この田中知委員の指摘した問題に対する日本原子力研究開発機構の返答は全くといっていいほど要領を得てない。

「もんじゅ」プロジェクトの抱える問題は、機器点検漏れなどといった「些細な」(「些細」という表現は不穏当だが・・)問題ではなく、「もんじゅ」プロジェクト自身、とても成立できるような状態にないのではないか。そして、もはやゴールを見通すことのできないプロジェクトがゆえ、機器点検漏れなど保守上の問題を引き起こしているのではないか、と思った次第だ。

以下、第38回原子力規制委員会臨時会議で、上述の「真の『もんじゅ』プロジェクト問題」に言及されていると感じた部分を書き起こしたものを掲げ、メモとして残しておいた。

(YouTube動画 時間:1:08:53)

田中知委員: 別の観点でもよろしいですか?
 
田中俊一委員長: はい

田中知委員: あのぉ 深化という話とかですね、ベクトルとかという話があって、あのぉ、先ほどの理事長からの資料からは、若干、ちょっとさきの話かも分からないんですけど、いっこ、お聞かせいただきたいのはですね、理事長あるいはJAEAの方も現在の「もんじゅ」をとりまく情況については十分に理解があると思います。で、そこにはですね、今、問題になっている安全管理とか保守管理とかいった問題だけではなくってですね、新しい燃料を作ることの困難さとか、あー、前に作ったですね、燃料が製造からかなり時間がたっているということに伴って燃料の核的特性が変化していることとかですね、また20年以上経過してですね老朽化が進んでいるふうなこともですね、この問題のなかに入っていると思うのですが、こういうふうに、「もんじゅ」そしてそれをとりまく情況を本当に現場的に一番知っている機構としてですね。燃料問題をはじめとする、本当の「もんじゅ」のプロジェクトと言っていいんですかね、「もんじゅ」事業のですね、展開の課題について、どのように考えているか、お聞きしたいと思います。

児玉敏雄原子力機構理事長: 課題としては、ま、とりあえず、保安措置命令の解除を、 その次はやっぱり新設計基準、あ、新規制基準対応、それから、やっぱり燃料の問題、えー、そういう問題、課題があるということは十分認識しております。それについては具体的にひとつひとつ潰して行くしかない、というふうに思っていますけど。
・・・・

(YouTube動画 時間:1:17:25)

田中知委員: さきほどちょっと、燃料問題で、そのお、「もんじゅ」・・で、いろんなプロジェクトの問題ということを聞いたんですけど、ひとつひとつつぶしていくんだ、という話があったんですけどもですね、そのぉ 燃料問題は、そんなに簡単につぶせない話ではないかと思います。そのぉ、もしかしたら、臨界になるかならないかわからない。臨界になったとしても出力があるところまでしかいかないかもしれないという 大きな 「もんじゅ」プロジェクトのなかの大きな課題であるというふうに、私は、認識しています。

児玉敏雄原子力機構理事長: 我々もそれは認識同じです。

田中俊一委員長: えーと、認識同じって 出力が上がらないとすると燃料を作り直すことになりますよね。で、MOX加工、MOX燃料ですから、MOX加工施設については新しい規制基準は相当厳しいです。ですから、今、それを作り直す、あのー、施設はないと思います。前は、なんか使用施設で作りかけたけど、それについてはだめだということで私どものほうから止めさせていただきましたけれども、そのへんについて、何かお考えありますか?

児玉敏雄原子力機構理事長: あのプルサン(?)の話・・

田中俊一委員長: いやいや「もんじゅ」のMOX燃料が必要なわけですよ。そうじゃないと、青砥さんもいらっしゃるから、あれですけども、どのくらいまで出力あげられ、どのくらいもつのですか。

青砥もんじゅ所長: えーと、今、お名前あげていただきましたので、お答えしますと、今、我々はどの時点で、どの程度の、今実際、手持ちにある八十何体と、それから実際に、今、我々が、あの、対応できる期限、これについて40%出力あるいは100%出力を見た時に、どこがキーになるか、そういうシミュレーションもしたうえで、全工程について、どこに課題があるか、というのを確認しつつあります。で、今の自分たちの感覚では、そのどこ・・、例えば40%出力試験についても その内容について、再度計画をしなおすということで、どの程度までの、その・・、燃料で、どこまでのパフォーマンスがだせるか、そういう検討もしてるところです。

田中俊一委員長: いや、私がお聞きしたのは、知(さとる)委員もそうだと思いますけども、今ある 今 原子炉に入っている燃料で、どこまでできるんですか、ということを聞いている

青砥もんじゅ所長: 今の、あと、対象となっている入っているものだけでは、あまり大きなことはできません。で、今、実際に手持ちである八十数体の燃料を一回あたりの燃料交換をすることによって、どこまでいけるか、ようは、新たに燃料は作れない、だから、今、手元にあるもので、どこまでいけるか、検討しているところだ、とお答えしました。

田中俊一委員長: よろしいですか、 それで・・・。
ちょっと、なんか、全然、こころもとない、ご意見、この時点で、・・ そんな気がしますけども、
えーと 他に、 ありませんか?

(YouTube動画 時間:1:26:40)

更田豊志委員: 「もんじゅ」の利用のアイデアとして廃棄物の減容であるという、ま、無力化というか、核変換のようなことを、・・ これも理屈としてはあり得る話ですけども、前提として、分離もするところもないし、燃料作るところもないし、ペレット一つ作るだけでも大騒ぎの技術ですよねぇ で、これをできるかのように、ま、これを10年先、20年先に原理として、高速炉で可能なものかもしれないけど、現状ペレット作るようなところも、ペレット1個ですら作るところがないわけですよ、で、それを「もんじゅ」が動けば、こういった廃棄物問題の解決に、貢献するかのように言うのは、少し、民間の感覚で言えば、誇大広告と呼ぶべきものではないでしょうか、

田中俊一委員長: ちょっと 安全とは 今 若干違うので・・ あんまり深い議論は 何か一言ありますか。

更田豊志委員: いや、これ 安全文化の問題だと私は思っていますけど・・

青砥もんじゅ所長: すみません、理事長が 今の国際協力の全体について、まだ把握されてない部分もあると思いますので、・・
逆に、更田さんのほうはご存じだと思いますけど、 えーとGIF Generation-IV International Forumという組織があって、そのなかで、常陽、「もんじゅ」について、今、おっしゃった視点から、どのように使うかという協議はされていて、どちらかというと、すでに、そこの合意はされたうえで、そのペレットはどこが作るのか、燃料はどこが作るのか、最終的に仕立てあげるのはどこか、というふうにされています。で、その問題について、まだ、今のところ、・・

田中俊一委員長: ちょっと。 ご発言中ですけども、その問題を詳しく聞く場ではありません。それ、やりますと、もっと別の議論がいりますので、これはちょっと控えていただきたい。GIFの話は、全く別問題です。「もんじゅ」とは、・・

青砥もんじゅ所長: あ、はい。


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