グレゴリー・ヤッコ元NRC委員長のインタビュー記事を読んだ

March 12, 2016 – 10:38 am

東日本大地震発生から5年目の節目を迎えた。新聞の特集記事のなかにグレゴリー・ヤッコ元米国原子力規制委員会(NRC)委員長のインタビュー記事を見つけた。福島第一事故のさなかに米国規制当局の責任者であった氏の5年経った今の発言、興味深く読んだ。

この新聞記事の興味深かった部分とともに、我が国の原子力規制委員会田中俊一委員長の数日前のインタビューを合わせて紹介し、原子力安全規制の在り方に多少の感想を述べておいた。

グレゴリー・ヤッコ元米原子力規制委員長は2012年までの4年間、その任にあった。米国の原子力安全規制の責任者である。2011年の福島第一原発事故当時、米国における福島第一事故への対応をした。最近では、原子力には批判的な立場をとっていることが知られている。

日経(3/11朝刊)の特集記事(「大震災から5年 原発どこへ」)にインタビュー記事(特集 あの日を越えて(5))が掲載されている。以下、特に興味深かった部分を抜粋、転載する:

米国は1979年、スリーマイル島原発事故を経験した。事故後、業界団体の米国原子力発電運転協会(INPO)ができ、緊急避難などの対応のために米連邦緊急事態管理局(FEMA)が創設された。原子炉の設計も大幅に変え、安全装置を追加し、中央制御室も再設計した。原子炉(の輸出)を通じ、変化は他国にも広がった。それでも福島で事故は起きた。
 技術評価をしていないので言及しづらいが、新規制基準に適合していても、もう事故は起きないと保証はできない。これは伝えるべき重要なメッセージだが、原発は安全になったという正反対のことが伝わっている。

インタビューのこの部分から、原子力安全規制に対する、規制当事者自身の持った無力感といったものを感じてしまう。我が国の新規性基準が「原発は安全になった」とのメッセージを伝えているというのは、まさに「新たな安全神話」ではないか。

田中俊一・原子力規制委員会委員長のインタビュー
日経(2/28付)に、田中俊一委員長のインタビューが掲載されていた。上述のグレゴリー・ヤッコのインタビューと合わせ読むと興味深い。

田中俊一委員長は、我が国の原子力規制の現状について次のように述べる:

規制が文字だけでなく実態として事業者に受け止められているか、審査が国民の信頼を得ているかという点でも未熟だ。欧米の規制機関はスリーマイル島原発事故など苦い経験を積み、審査や検査を磨いてきた。欧米から学ぶことは多い。

学ぶことが多いとされる欧米の規制当局の責任者の一人は、上述したように、福島第一事故ですっかり自信を無くしてしまっている。これはグレゴリー・ヤッコひとりの見解と考えていいのものか?注視したいものだ。

さらに、田中俊一委員長は、「今後、電力会社に何を求めますか」との問いに:

 規制基準は最低限の要求で、それを超えて安全性を高めるのは事業者の責務だ。トラブルなしで稼働率が上がれば事業者の利益になり、安全確保の動機付けになる。米国では事業者が設けた原子力発電運転協会が自主的に安全性をチェックし、規制当局から信頼されている。これはひとつの理想だ。日本にできた原子力安全推進協会も役割を果たすよう期待したい。

ここで、米国における業界団体「原子力発電運転協会」の役割を紹介し、ひとつの理想とし、我が国における業界団体組織である「原子力安全推進協会」に期待を表明している。

最近読んだ憂慮する科学者同盟のメンバー等による「実録FUKUSHIMA–アメリカも震撼させた核災害」では、「原子力発電運転協会」の役割がかなり否定的にとらえられている。原子力安全規制のありかたについて、さまざまな意見がありそうだ。

田中俊一委員長が言うように業界組織が「自主的に安全性チェックし、規制当局から信頼される」という姿が、理想といえるのか。まだまだ考える余地はありそうだ。


Post a Comment