「もんじゅ」への原子力規制委員会勧告に櫻井よしこかみつく

December 13, 2015 – 1:11 pm

日経(12月13日付朝刊)に、櫻井よしこの写真を大きく載せた意見広告が出ていた。
櫻井よしこ意見広告
その主張、「政府は原子力政策を明確にし、原子力規制委員会の行き過ぎを正すべきです。」というもの。

福島第一事故で、我が国の原子力政策の破綻が明らかになり、これを「取り繕う」ために作られたのが「原子力規制委員会」だったはず。

広告の中身を読むと、規制委員会の「もんじゅ」への勧告が、国の核燃サイクル路線にとって都合が悪いので「規制委員会の行き過ぎを正すべき」ということのようだ。

国の原子力政策は安全なんか無視して進めるべし、ということだと理解した。

櫻井よしこがライトウィングの論客であることと、この意見広告の中身をつなげると、我が国の核燃料サイクル計画が「エネルギー供給を目指す基本計画」というより「潜在的核軍備」を目指すものではないかと疑ってしまう。

最近、「核時代の神話と虚像(原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史) 赤石書店2015年7月30日)」を読んだ、所収の藤田祐幸の論文「掣肘うけざるべく –核燃料サイクル計画の裏に潜む闇」というのがあった。そこには、「高速増殖炉の『もんじゅ』はプルトニウムロンダリング装置」とされ、「このプルトニウムを使えば小型軽量の高性能核兵器を製造することができる。」なんてぞっとする話がでている。

櫻井よしこの意見広告を読んで、藤田祐幸の話がまんざらではないように思った次第。

藤田祐幸論文の関連部分を参考のため、以下に引用・転載しておく:

 次にとりかかったのは「高速増殖炉」の開発であった。まずは茨城県大洗に実験炉としての「常陽」が建設され(1979年)、次いで、福島県敦賀市に実証炉「もんじゅ」が建設された。さらにこの「もんじゅ」の使用済み燃料からプルトニウムを抽出するための再処理工場(RETF)を東海村に建設する手はずであった。うまくいけば二〇世紀の終り頃までには、この国は、いつでも望むときに好きなだけの戦術核兵器を実戦配備できるだけの能力を持つはずだった。経費は国民の電気料金で賄わわれるはずであった。

 この核燃料サイクル計画の最大の眼目はプルトニウムの同位体比にあった。核分裂性プルトニウムは原子量が奇数のものに限られる。INFCE(国際核燃料サイクル評価)のデータによれば、原発の炉心から取り出された使用済み燃料から得られるプルトニウムを見れば、核分裂性プルトニウムである二三九は五八パーセントにすぎず、二四一と合わせても六九パーセントにすぎない。この軽水炉級プルトニウムで核兵器を作ることは不可能ではないが、実用的ではない。核兵器級プルトニウムは九〇パーセント以上のものが望ましいとされている。ところが、高速増殖炉のブランケットと呼ばれる部位から得られる核分裂性プルトニウムは九八パーセントにもで達するとされている。ここにこそ、佐藤栄作が描いた核燃料サイクルの未来が秘められていたのだ。

 高速増殖炉「もんじゅ」の炉心の構造にその秘密がある。炉心は二重構造になっていて、内部には軽水炉級プルトニウムと劣化ウランの混合燃料(Mixed Oxide Fuel, MOX)が組み込まれている。そしてその外周を埋めるようにブランケットが取り巻いている。このブランケットは、炉心から放出される中性子線を遮蔽するためというのが表向きの存在理由であるが、材料は劣化ウラン(ウランニ三八)である。ウラン濃縮工場の副産物であるこの劣化ウランに炉心から中性子線が照射されると、ウラン二三八の原子核はこれを吸収してプルトニウム二三九に転換される。その純度は九十八パーセントにまで達する。

 真ん中の炉心に低純度の「汚い」プルトニウムを装荷すると、ブランケットからは高純度の「きれいな」プルトニウムが出てくる仕掛けだ。フランスの高速増殖炉スーパーフェニックスのパンフレットには、高速(増殖)炉の利点が列挙してあるなかに、「高速増殖炉すなわちプルトニウムの洗浄装置」であると明瞭に書かれている。高速増殖炉原型炉の「もんじゅ」はプルトニウムロンダリング装置であったということになる。

 このプルトニウムを使えば小型軽量の高性能核兵器を製造することができる。トマホークのような小型ロケットに積みこみ、ピンポイントで戦艦や軍事基地を攻撃すれば、一発の弾頭で壊滅的な打撃を与えることができる。
(pp.158-160)


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