新型インフルエンザ対策と日本の危機管理

August 23, 2009 – 4:03 pm

数日前、厚生労働省により新型インフルエンザが「全国的に流行入りした」と発表された。国立感染症研究所の推計では、先週1週間(8月10~16日)で新たにインフルエンザに感染して医療機関で受診した患者数が全国で約11万人に達したという。いよいよきたな、というところだ。

新型インフルの話題が身近に!: 3週間前くらい、高校生の娘のところに、「夏休みの部活動は中止し、毎朝、体温を計測し報告のこと」との連絡があった。どうやら、同じ部活動をやっている生徒が新型インフルエンザに感染・発症したらしい。発症した生徒は(既に、回復したらしい)、夏休み中、どこにもでかけず、外出といえば自宅と学校を往復しただけ、感染の原因が思い当たらないという。

プロ野球では、日本ハムの選手・コーチのなかに感染者がでたという。甲子園では、ある高校の球児たちが集団感染したという。大相撲の力士にも感染者がでて、琴欧州が稽古場でマスクをしている様子がテレビに放映されていた。

厚生労働省とか国立感染症研究所の発表を待たなくても、新型インフルエンザが流行の兆し、いや既に流行の域に入っている、と誰もが感じていた。

流行の兆し、どう捉えるべき?: 春先に、メキシコで豚インフルエンザが発生したときは大変な騒ぎだった。わずか数ヶ月前の話なのに、もうかなり昔のような気がする。ひとりでも感染者が入国すると2週間目には、東京で322,000人の新たな感染者が発生するとの予測もあった(このあたりの話、「インフルエンザ感染拡大予測シミュレーションの意義って何?」に書いた)。

幸い、この予測は「見事に」はずれ、数ヶ月遅れの今、「やっと」、日本全体で11万人の新たな感染者が発生する状況になった。「幸運にも」予測がはずれ、我々は対策を講ずべき十分な時間を得たはずだ。

この数ヶ月間で、どのような新型インフルエンザについて対策が講じられてきたのだろう。ワクチンの製造など、いろいろ手が打たれているようだが、流行入りした今めだつのは、「手洗い、うがい励行」と「マスク着用」なるキャンペーンだ。なんとも、こころもとない、というのが実感だ。

数ヶ月前のエントリーで、次のようなことを書いた:

「新型」インフルエンザが終息するには、①ほとんどのヒトが罹患し免疫を獲得する、②ワクチンが開発され、この接種により多くの人が免疫を獲得する、③ウイルスが死に絶える、の3つしかないはずだ。だとすれば、今回のWHOの宣言したパンデミックの状態、今後、相当長期間にわたって続くと考えざるをえない。

心配していた長期のパンデミック状態の入り口にさしかかったというのが現在の状況と考えるのが一番正しそうだ。

とるべき対策は簡単だ。①罹患した場合に、タミフルとかリレンザを早期に投与できる体制をつくること、②ワクチンの開発・製造を急ぎ、その投与を急ぐ、という2点につきると思う。素人考えということはあるかもしれないが、あたらずとも遠からず、といったところだろう。

ところが、である。わが国の現状は、「20日に、専門家や患者団体との意見交換会を開き、基礎疾患のある患者や妊婦らに優先的に接種する大枠が固まった」という状況だ。また、年内に製造できるワクチンは最大1700万人分にとどまる、という。オーストラリアは9月から投与を始め、米国やドイツ、韓国なども基礎疾患をもつ人や妊婦らに優先接種することを決め順位も公表しているというのに、である。わが国の対応、なんともお粗末ではないか。今になって、意見交換会でもないだろう、と思ってしまう。

対策は科学的で実効的でなくてはならない!:インフルエンザ対策として、すぐでてくるのが「手洗い、うがい励行」、「マスク着用」だ。こうした対応、単なる「精神主義」的対応にすぎない。この種の「精神主義」的対応、最初の数週間を乗り切るには、多少は、意味があるかもしれない。しかし、本筋ではない。

困ったことに、こうした「精神主義」的対応、結局は、問題を個人個人の注意不足といったところに求めようとする。春先にインフルエンザに罹患した高校生に対し、こころない「非難」の矛先が向けられたのは記憶に新しい。

危機管理が「精神主義」的なものになる傾向は今回のインフルエンザ問題に限らない。例えば、地球温暖化問題への対応にもみられる。地球温暖化対策に、「レジ袋不使用」とか「まき水」といった筋違いの方法が推奨されている(「レジ袋不使用が地球温暖化対策?」を参照)。

危機管理は、科学的な分析と実効的な対策こそ必要であり、ひとりひとりが注意し、みんなで頑張ろうなんて「精神主義」的対応であってはならない。

新型インフルエンザ問題を考えると、我が国の危機管理のありかたに重大な欠陥があるのではないか、と思ってしまう。

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