福島第一事故による放射線被曝をどう考えればよいか(その4)

June 10, 2011 – 2:30 pm

前回(その3)、私の居住する地域(福島第一からおよそ120Km南南西の位置)での空間線量率の推移についてみた。今回は、空間線量に寄与する内訳、すなわち放出放射性核種の構成とその放射線線量への寄与がどうなっているかを見ることにした。

地表面に沈降した放射性核種: 前回、「地表面に沈降・沈着した放射性核種には、主に、I-131そしてCs-137が占めると考えるのが自然」、としていた。その後、ネット上に公表されているデーターを検討してみて、このあたり少し修正する必要があることが分かった。というより、私は肝心なことを忘れていたのだ。不明を恥じる。

地表面に沈降する放射性核種のガンマー線スペクトルが産総研(産総研・つくばセンター放射線測定結果)のサイトに示されている。このデータ、Web上に公表されている降下物のγ線スペクトルを示しているものとしては最もまともな観測データと感じた。

以下、スペクトルを転載させていただく:

上図では、地表面に沈降してきている放射性核種のガンマ線スペクトルがしめされ、その測定方法について記述されている。

このスペクトルの測定

産総研敷地内の平地に1m×1.5mのビニールシートを敷き、1時間に付着したほこりをふき取った資料の放射能を、ゲルマニウム検出器で測定

している。これを見ると、福島第一から「つくばセンター」に到達し、地表面に沈着した放射性核種の種類がよくわかる。このガンマー線スペクトルから、地表面を汚染させている放射性核種には、放射性のヨウ素、テルル、セシウムなど「揮発度」の比較的高いものが大部分を占めていることがよくわかる。

これら放射性核種について、「半減期」、「単位面積・単位放射能あたりの空間線量(率)への変換係数」(IAEA-TecDoc-1162参照)、「3月15日の降下放射能」をまとめると下図のようになる:

上図の「3/15測定の放射能降下量(Bq)」は、上述の「産総研サイト」に掲載されている3/15の測定分(9:20 ~10:20 及び13:20~14:20)の和を示している。

検出放射性核種の空間線量率への寄与: 上図の「Conversion factor : Ambient dose rate from deposition]を用いて、沈降した放射性核種の空間線量への寄与をみてみると、事故時からの経過時間が初期では、I-131よりむしろI-132 (Te-132からの崩壊分も含む)の寄与が大きく、時間が経過し1ヶ月間くらいになるとI-131の寄与が大きくなってくる。

経過時間がさらに数ヶ月から数年の範囲が経過すると、Cs-137より、Cs-134からの寄与が最も大きくなる。10年程度経過すると、Cs-137からの寄与が最も大きくなる。

私が居住する福島第一から100Km以遠については、事故から3ヶ月経過した現在、最も注目しなければならない放射性核種は、Cs-134である。

Cs-134: Cs-134は、他の放出放射能と異なり「核分裂生成物質」ではない。これは核分裂で原子炉内に生じた安定元素Cs-133が中性子を捕獲し、放射性のCs-134に変換されたものである。したがって、数十年前に盛んにおこなわれた大気圏核実験からのフォールアウトには含まれていない。

Cs-134による環境汚染が話題になったのは、ウィンズケール(現セラフィールド)の再処理工場から放出された廃液で海が汚染された話だ。そのあたりの話、「その1」で紹介した「原子力を考える」(新日本新書316)にある:

(英国ホリー・ロッホ周辺で採取した)海草や貝などを立教大学原子力研究所のゲルマニウム半導体検出器を使って調べたところ、不思議なガンマ線スペクトルが発見されました。このスペクトルの示す核種はセシウム134でした。この核種は、普通は核分裂で生じたセシウム133に中性子が吸収されて生成します。核分裂したのち、さらに中性子で衝撃されるということは、よほど長期間照射を受ける環境にいたことを意味します。もしこれが原潜の原子炉から漏洩したものであるとしますと、コバルト60などが大量に検出されるはずです。またセシウム137もそれほど多くはありませんでした。まことに不思議なスペクトルでした。
・・・・・
この謎はその年服部さんが英国を訪問し、英国の友人にこの不思議なスペクトルの話をしたことによって、ただちに解けたのでした。その人は、それはウィンズケールの核燃料再処理湖上からの液体廃棄物の海洋放出によるもので、データも公表されていることを教えてくれたのです。(pp.48-49)

原子炉内から放出される放射性セシウムというときに、忘れてならないのはCs-137だけではなく、Cs-134なのである。特に、事故から間もない現時点では、Cs-134の寄与は大きい。

以下、Cs-134の崩壊データについて、まとめておいた: