新型インフルエンザの拡大をどう考えればいいのだろう

May 23, 2009 – 4:14 pm

新型インフルエンザの国内での患者発生ということで、薬局の店頭からマスクが無くなってしまったようだ。私のような還暦を越えた人間には、この状態、30数年前のトイレットペーパー騒ぎを思い起こさせる。曖昧な情報で右往左往するのは避けねばならない。どのように対処すべきなのか、国立感染症研究所のサイトを覗くなどして、少し考えてみた。

「新型インフルエンザ拡大シミュレーション」: 今回の新型インフルエンザが発生する以前から新型インフルエンザの大流行、いわゆるパンデミックについて議論される際には、感染の拡大を予測するシミュレーション結果が示されていたと記憶している。このシミュレーション結果が、我々が現在経験している感染の拡大を、どの程度忠実に再現しているのかをみるのは現状を知るうえ、そして今後の対策を考えるうえで有益なことなのではと考えた。

ということで、この「シミュレーション研究」についてWeb上で検索してみると、関連する論文として次のものが見つかった:

Ohkusa, Y. and Sugawara, T.(2009) Simulation Model of Pandemic Influenza in the Whole of Japan, Jpn. J. Infect. Dis., 62, 98-106, 2009

この論文、国立感染症研究所のサイトで全文ダウンロードすることが可能になっている(http://www.nih.go.jp/JJID/62/98.pdf)。

この論文の著者、大日康史(国立感染症研究所感染症情報センター主任研究員)は、わが国で感染拡大のシミュレーション研究の代表的な研究者のようだ。この研究では、都市工学のデータのひとつ「パーソン・トリップ・データ(Person trip data)」を活用したシミュレーションを行っている。かなり現実的なシミュレーションが可能のようだ。

さらに、Web上で検索してみると、この論文の著者、大日康史主任研究員、に対するインタビュー記事、「新型インフルエンザのパンデミックに備える」という記事を見つけた。この解説記事、今回の「豚インフルエンザ」の発生以降に書かれており、上述の論文を一般向けに説明している。

このシミュレーション結果を見るとかなりすごい。海外で感染したひとが帰国して15日目、そして25日目の感染者数の拡大の様子が示されている。事態の収束は、50日程度と考えられているようだ。

これを読むと、どうやら、今回のインフルエンザ騒ぎ、今からが本番だなという気分になる。今後の推移を、この論文に示されているシミュレーション結果と比較しながら見てゆかねばと思う。この種のシミュレーションの予測性能を知るうえでも興味深いことだと思う。

このシミュレーションが行われた意味はどこにあるのか?: さて、シミュレーションがどれだけ正確に事態の推移を予測できるのかという興味は別にして、上述の解説記事には、新型インフルエンザのシミュレーションを行う意味について重要なことが述べられている。以下、引用:

このシミュレーションでは、50~60日後までの経過を追っています。実は、どのような対策を採ったとしても、最終的な患者数にはほとんど変化は見られません。誰もが免疫を持たず、完全な封じ込めが出来ない以上、ほとんどの人が罹患することになる。したがって、問題は、感染の拡大に対し、医療機関や薬品が「間に合うかどうか」なのです。

どういった対策が採られようと、ひとたび新型インフルエンザが発生するとほとんどの人が罹患するというのだ。

では、シミュレーションで予測をすることにどのような意味があるのか、「医療機関や薬品が『間に合うか』どうか」、そうした準備が十分かどうかを前もってきちんと把握しておこうということだろう。インフルエンザ発生後の感染予防対策は医療機関や薬品を準備するための「時間稼ぎ」としてどの程度効果があるかを見極めるということなのだろう。

新型インフルエンザの流行が収束する条件は、このように考えてみると、大部分のひとがインフルエンザに罹患してしまう、あるいはワクチンの投与により、免疫を獲得する、あるいは感染予防の効果が十分で、インフルエンザウィルスが「死に絶える」ということのようだ。

新型のインフルエンザに対しては、発生初期の段階ではウィルスの正体は明らかでない。当然、ワクチンを早期に期待することは困難だ。

ということは、たとえ罹患したとしても、重篤な症状を惹き起こさないように早期の治療を行う、あるいは、常日頃、感染し発病したとしても、これに耐えられるだけの健康な身体を維持しておくいうことのようだ。ウィルスが、早期に、「死に絶える」のを期待するのは現実的ではないからだ。

なるほど、新型インフルエンザの感染拡大というのは、かなり厄介なものだと再確認した。今回は、幸いにも、今のところ弱毒性のようだ。冷静に推移を見守り、罹患した際には早期にタミフルで治療を、そして日頃の体力維持を図るということにつきるのかな?

インフルエンザ対策は、みんながマスクをつけて歩くということではなさそうだ。罹患後に、他人にうつさないようにマスクをするというのは、意味がなくなないだろう。しかし、感染予防にマスクをするってのは、あまり効果がないんじゃないかなと、素人考えではあるが、考える。

どうなんだろう。


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  2. Jun 14, 2009: インフルエンザ感染拡大予測シミュレーションの意義って何? | Yama's Memorandum

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