年金問題と消費税
January 9, 2008 – 11:25 am1月7日付けの日本経済新聞に、「基礎年金・全額消費税で」というタイトルで日経が独自に組織した研究会の検討結果が発表された。この検討結果、かなり説得力のあるものだ。記事の骨子は、「年金の財源確保のため消費税を5%上げ、公的(国民)年金保険料の徴収をやめる」というものだ。
昨年来、「消えた年金」騒ぎで、国の年金制度が大きな問題となってきた。この問題についての鉾先は社会保険庁に向けられている。国民の怒り、不安は当然だ。なにしろ、長年にわたって保険料を支払ってきたにも関わらず、年金受給年齢に達したら、保険料を支払った記録がありませんというのだからたまったものではない。社会保険庁は責任を取るべきだというのは当然の流れだろう。
私自身、いわゆる団塊の世代である。そろそろ、年金の受給年齢に到達し、収入は年金のみという年齢に突入する。この問題、かなり深刻だ。しかし、「消えた年金」騒ぎについては、率直に言って、多少違和感がある。年金問題自身は、記録漏れ程度の問題ではなく、もっと深刻なのではということである。ひょっとしたら、記録はあるけど、支払できませんという事態が発生するのではないかという心配である。年金制度自体が、殆ど、壊れているのではないのかということだ。
1年程前、ある銀行の窓口で個人年金について相談をしたことがある。そのときの担当者の説明、「個人年金に対しては、国が税制上かなり優遇している事実がある。その理由は、国自身が公的な年金制度が殆ど破綻していると考えているからだ」というのだ。この銀行員の話、かなり乱暴だ。ただ、こうした説明を、銀行員がすること自体、問題の深刻さを示しているのではないのだろうか。
さて、年金問題の解決はどうすればいいのか。当然のことながら、財源をどこに求めるかということになる。保険料を上げ、その徴収を強化すればいいのか?国民年金保険料は、現在、ひとりあたり一ヶ月で約15,000円徴収されている。夫婦ふたりで月額3万円だ。年間にすると、実に36万円もの保険料を払わねばならない。もう限界だ。これを消費税5%アップで賄うとするのが日経の研究会の案である。消費税5%に相当する年間の生活費(消費額)は単純計算で700万円になる。これだけの年間生活費かなりの高額所得者以外にはない。私のような一般庶民、夫婦が生活するうえで必要な年間生活費、せいぜい300~400万円というところだ(消費税として15~20万円の支払いに相当)。節約すれば、年金制度も破綻させることなく、なんとか生き延びられるのではないかという感じがする。
消費税をアップした財源で年金制度を維持するという案、切り札という感じがする。しかし、問題は、高くした消費税が適正に年金に充当されるかどうかということだ。知らないうちに、年金以外の用途に使われるようでは、「消えた年金」騒ぎどころではない。国自身が組織的に着服したということになってしまう。結局のところ、問題の核心は、信頼に値する政府をどう作るか、どう監視するかというところになってしまうのか?
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