ドイツの再生エネ、化石燃料を上回った 我が国は??
January 6, 2020 – 11:29 am日経の電子版(1月4日 3:00)に「ドイツ再生エネ46%、初めて化石燃料を上回る 19年」という記事がでていた。
昨年暮れに開かれたCOP25では日本の地球温暖化対策の遅れが批判されたが、福島第一事故の後、すぐに、脱原発の方針を採ったドイツ、再生エネルギーの活用が進んでいるようだ。このニュースを我が国の現状と比較しながら考えてみた。
日経記事のリード文は以下。(転載)
ドイツの発電量に占める再生可能エネルギーの比率が2019年に初めて化石燃料を逆転した。太陽光や風力などの再生エネの発電シェアは18年から5.4ポイント上昇し、46.0%に達した。石炭などの化石燃料は約40%だった。英国でも原子力を含めた二酸化炭素(CO2)排出ゼロの電源が初めて化石燃料を上回り、欧州の脱炭素を裏付ける結果となった。
ドイツの電源別発電量の特徴:
ドイツの1年間の発電量は、5155億6千万キロワット時(515.56テラワット時)。
その電源構成比は下図。
ここに示した図は、我が国の電源構成と比較するため、日経記事の図を編集しなおしたものになっている。
この図のうち、石炭火力発電(図凡例でCoalと示したもの)は、「石炭」によるもの 9.4%と「褐炭」によるもの 19.7%をまとめて 29.1%としている。また、日経の記事では「原子力・その他」という分類で14.4%となっているが、上掲の図ではこの全てを原子力発電として取り扱った。
この図から理解できるように、電源別の発電量を並べてみると、石炭火力が29.1%と最も大きくなっている。また、風力発電がこれにほぼ匹敵するものになっている。46%を占めることになった再生エネルギーの主力がこの風力によって担われていることになる。
冒頭で触れたように、ドイツは脱原発の方針をとっており、2022年には全ての原子力発電所を閉鎖すると聞いている。原子力からの寄与をゼロにし、さらに化石燃料による発電比を低下させるうえで再生エネルギーの寄与をどのように増やしていくか、課題は大きいように思われる。
我が国の電源別発電:
我が国の現状を表す資料として経済産業省による「平成30年度(2018年度)エネルギー需給実績とりまとめました(速報)」があった。おそらく、この資料が我が国の電源別発電を知るうえで最新のものだと思う。
この資料は、我が国の電力事情について、2018年までの10年間の推移を示している。
以下に、この通商産業省のデータをもとに、2018年そして福島第一事故の前年2010年のデーをもとに電源別構成比を図式化している。
因みに、我が国の2018年度1年間の発電量は10,471億キロワット時でドイツのほぼ2倍の規模になっている。2010年度の発電量については、11,495キロワット時であり、この10年で10%程度発電量が低くなっている。
2018年度の電源別発電比についてドイツの2019年度のそれと比較してみると、我が国の電源別発電比は、石炭、天然ガス、石油といった化石燃料の占める割合が非常に大きいことが分かる。実に、4分の3程度が化石燃料によるのには驚く。
ドイツと比べて、石炭火力の割合はほぼ同じで、我が国では天然ガス発電占める割合が大きいことが理解される。福島第一事故により原子力発電が寄与が少なくなった穴埋めを天然ガスで補っているのが分かる。
我が国の2018年度の電源別発電量を福島第一事故の前6.2%年2010年のそれと比較してみると、当然のことながら原子力発電の寄与割合が25.1%から6.2%と大幅に低下している。原子力発電の寄与が低くなっている部分を補うかたちで天然ガス発電と再生エネルギによる発電が補く形になっている。
再生エネルギのうち、太陽光発電が2018年に大きく伸びてきており、加えてバイオマスによる発電が若干増えている。
福島第一事故後、脱原子力が唱えられ、これに代わるものとして再生エネルギが注目された筈だ。しかし、上掲した2018年、2010年の電源別発電比をみると、原子力の寄与低下部分を補なったのは、天然ガスによる発電が最も大きく、再生エネルギは期待されたほど増加していない。
上述したように、福島第一事故前に比較し、我が国の総発電量は1割程度減少している。原子力発電を補う部分として、この発電量減少もある。この部分、省エネによるものなのか、日本の経済の縮小によるものなのか、私には定かではない。省エネによるものであるとしても、脱原発を補うものとしては少し後ろ向きという感じがしないでもない。
いずれにしろ、福島第一事故後は、ある意味、再生エネルギーへの転換にむけての大きな機会を得たはずであったが、我が国はこの機会を逃してしまったような気がしてならない。